こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
相続放棄をすると、相続財産は受け取れません。そのため、相続税の申告はしなくてもよいと考えがちです。
この考えは、おおよそ正解です。しかし、相続放棄を選択したからといって、相続税の課税が全くなくなるわけではありません。
というのも、相続放棄をしても一部の財産は受け取れるからです。その代表例が、「生命保険金」や「死亡退職金」などの「みなし相続財産」。これらは、民法では相続財産ではないものの、死後に渡されるという点が相続財産と同じということから、税法上で相続税が課されるのです。
また、生前贈与でも相続開始前の3年間にされたものは、相続財産に加算されるので、生前贈与と遺産の合計金額によっては、相続税が発生します。
目次
【相続放棄とは】
相続放棄とは遺産を全く受け取らない方法です。遺産を全く受け取らないとは、法定相続人としての権利を手放す行為を指します。
相続権がなくなるため、相続財産の取得はできません。しかし同時に、借金なども引き継がなくて良いことになります。
よって、相続放棄は被相続人の財産に借金が多い場合に活用されます。また、遺族との関係が悪く、遺産分割協議に参加したくない場合にも利用されます。
相続放棄を選ぶかどうかは、相続人本人の意志次第ですが、いつでも手続きできるわけではありません。相続放棄は自身が相続人であることを知ってから3ヶ月以内(熟慮期間内)に完了しなければならないのです。
もし、期限が切れてしまうと、「単純承認」を選択したという扱いになり、相続放棄が不可になります。単純承認とは、全ての遺産、金銭や不動産、債務も含めて全てを相続するということです。
【みなし相続財産を受け取った場合、相続税が課税される】
相続放棄をした場合、相続財産は受け取れなくなります。
しかし、生命保険金などの死亡保険金については問題なく受け取れます。これは、死亡保険金等が相続財産ではなく、受取人の固有財産だからです。
民法では相続財産は「亡くなった人が所有していた財産に関する権利と義務」としています。しかし、保険金や退職金は契約に基づいて受取人が得るお金である点から、被相続人の所有財産ではないとしているのです。
以上の理由から、相続放棄をしていても、死亡保険金や死亡退職金は受け取れるのです。しかし、これらは税法上では「みなし相続財産」に該当するため、通常の相続財産同様に相続税が課税されます。
なお、生命保険金や死亡退職金には相続税の計算において非課税額があります。
「500万円×法定相続人の数」が非課税額ですが、これを適用できるのは相続人だけとなっています。つまり、相続放棄をした方は、相続人ではないので、この非課税枠を受けられません。
受け取ったみなし相続財産のすべてが相続税課税対象になります。
【生前贈与で相続税精算課税制度を適用していた場合】
生前贈与について、特に相続税精算課税制度の適用を受けている場合は、相続放棄をした場合であっても、生前贈与の金額を基準にして、相続税が課税されてしまう可能性があります。
相続税精算課税制度とは、贈与財産の合計が受贈者一人につき2,500万円まで贈与税がかからないというものです。しかし、贈与税は無税でも、贈与者死亡後に、相続財産に贈与分がカウントされて相続税がかかる仕組みとなっています。
つまり、相続税精算課税制度の適用を受けている方で、相続放棄をした場合であっても、生前贈与の金額を基準として、相続税が課税されてしまうのです。
ただし、相続税が生じるのは相続時精算課税適用財産を加えた課税価格の合計額が相続税の基礎控除額を超える場合のみです。基礎控除を下回る場合は、相続税はかかりません。
【該当期間内に生前贈与を受けた場合】
生前贈与を受けた場合、相続放棄をしても相続税が課税される場合があります。
というのも、相続開始3年以内にされた生前贈与は、相続財産に含まれるからです。該当期間内の生前贈与と他の相続人が取得する遺産の合計額が、相続税基礎控除額を超えてくる場合は、金額に応じた相続税を支払う必要があります。
ただし、生前贈与加算の対象者は相続や遺贈により財産を取得した人です。
つまり、相続放棄をしていた場合、みなし相続財産を受け取っていなければ、対象者にはなりません。
なお、生前贈与加算は将来的に該当期間が延長されます。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
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