【 生前贈与 】どう変わった?結婚・子育て資金の一括贈与の特例について

生前贈与 の一種である結婚・子育て資金の一括贈与の特例について変更がなされました。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。

結婚や子育てには多くのお金が必要になります。そのため、子供や孫に援助をしたいと思う方もたくさんいるでしょう。

両親とその子供など扶養義務者との間ではこのような資金について、都度支払う場合は問題ありません。ですが、将来的に使うものとして、一括贈与する場合となると、贈与税がかかります。

そんな時は、「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」を検討しましょう。要件を満たせば、高額の資金贈与でも、非課税となるからです。

この特例は、適用期限が令和3年3月31日まででしたが、2021年の税制改正により令和5年3月31日までに延長されています。ただし、同時に内容も厳しくなっているため、注意が必要です。
 

【結婚・子育て資金の一括贈与とは】

結婚・子育て資金の一括贈与の正式名称は『父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』です。(少し長いので本コラムでは、「結婚・子育て資金の一括贈与特例」とします。)

通常の生前贈与では、年間110万円までしか非課税枠がありませんが、本特例を適用することで、非課税枠が最大1,000万円になります

ただし、資金の用途は結婚と子育てに限定され、各項目も細かく決められています。また、贈与者と受贈者の関係は「両親とその子ども」「祖父母と孫」等の関係に限定されます。
 

【制度の要件】

  • ・上限は受贈者1人あたり1,000万円
  • ・贈与者と受贈者は「両親とその子ども」もしくは「祖父母と孫」
  • ・受贈者に年齢と所得制限あり
  • ・金融機関で専用口座を開くこと

控除額は「受贈者一人につき」最大1,000万円です。間違いやすいですが、両親・祖父母からそれぞれ1,000万円ずつ贈与できるわけではありません。

また、前述したように、贈与者は受贈者の直系尊属である必要があります。(曽祖父・曽祖母と孫の関係でも成立します。)

受贈者も18歳以上50歳未満で、前年の合計所得が1,000万円以下の方に限られます。
※以前は20歳以上でしたが、令和4年4月からの成人年齢引き下げに伴って変更となりました。

そして、同制度を適用するには、取り扱いのある金融機関で専用口座を開設しなくてはなりません。開設可能な口座は、受贈者1人につき1つです。(預け入れは一括ではなく分割でもできます。)

なお、口座は厳重に管理されるため、結婚・子育て以外の目的でお金を引き出すことは実質不可能です。
 

【結婚資金および子育て資金の範囲と金額】

(1)結婚資金

結婚資金に適用できるのは、「結婚式にかかる費用」と「結婚後の新居の費用」に分かれます。
限度額は300万円までで、具体的な費用は以下の通りです。

  • ①結婚式費用
    会場費用・衣装代・ビデオ撮影代・引き出物代など
  • ②新居費用
    敷金・礼金・仲介手数料・契約更新料、引越し代など

(2)子育て資金

子育て費用は、「出産に関する費用」と「育児に関する費用」に分かれます。

結婚資金と比べて対象のものが広く、使いやすいでしょう。限度額は1,000万円までですが、これは結婚資金との合計額です。仮に結婚資金で200万円を利用したのであれば、子育て資金で非課税になるのは800万円です。

  • ①出産費用
    不妊治療費、妊婦検診費、入院費用、薬剤費、産後ケア費用など
  • ②育児費用
    医療費、保育園などの入園費、託児費用、ベビーシッター代

 

【令和3年の改正ポイント】

(1)2年間の期限延長

適用期限が令和5年3月31日まで延長されました。

冒頭でも述べたように結婚・子育て資金は都度贈与すれば非課税となることから、特例を活用する方は多くはないというのが現状です。

(2)受贈者の年齢要件

成人年齢引き下げに伴い、受贈者の年齢要件が18歳以上50歳未満になっています。

(3)管理残高は2割加算制度の対象に

結婚・子育て資金の一括贈与特例では、贈与者が亡くなった段階で口座に残っているお金は「遺贈」という形で、受贈者が受け取ります。

そして、受贈者が贈与者の孫やひ孫にあたる場合は、相続税額の2割加算の対象となってしまいます。

今までは、孫であっても管理残高に関しては2割加算の対象ではなかったため、この変更は納税者に対して厳しいものと言わざるをえません。
 

【生前贈与のご相談は八王子相続サポートセンターへ】

令和3年の改正によって、結婚・子育て資金の一括贈与の特例は少し扱いが難しいものになったかと思われます。

安易に利用してしまうと、相続時に2割加算の対象となるリスクもあるので、活用は慎重に検討しましょう。迷っているのなら、相続専門の税理士に相談されることを強くおすすめします。

生前贈与や相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。

60余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。

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投稿者: 古川顕史(公認会計士・税理士)

八王子相続サポートセンター センター長。 公認会計士・税理士。 早稲田大学商学部卒業 あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。 八王子相続サポートセンター所長 相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数。