こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
相続財産は現金や土地・建物、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金といったマイナスの財産も引き継ぐことになります。
相続税の計算においては、現金などのプラスの財産から、マイナスの財産を差し引いて「正味の遺産額」を確定します。(他にも相続開始前3年以内に行われた贈与財産の価額を加えます。)
このマイナス財産を差し引ける制度を「債務控除」と言いますが、債務控除には被相続人が残した借入金の他にも、葬式費用が該当します。
葬式費用は相続開始時には発生していませんが、通常の場合、相続人は被相続人の葬式費用を負担することが通例なので債務控除が認められています。
【債務控除とは】
既に述べましたが、債務控除とは、相続財産のうちに借入金や未払金といったマイナス財産がある場合、その財産をプラスの財産から差し引いて相続財産の価額を計算する制度です。
民法では、相続人は被相続人の相続が発生したときから、被相続人の財産に属した一切の権利義務を継承するものとされています。(相続人と同様に包括受遺者も権利義務を承継するとされています。)
そのため、相続税法でも、プラスの財産からマイナスの財産を控除して正味の財産に相続税を課すことにしているのです。
遺産総額から差し引くことができるので、債務の金額によっては、納付する相続税額の負担を大幅に減らすことが可能です。(その分、実質の遺産取得金額は減りますが…)
遺産総額から差し引けるのは下記の2つです。
②葬式費用…明確には債務ではないものの、一般的には遺族が負担することが通例のため
【債務控除の種類1:債務】
控除が認められている主な債務は以下の通りです。
(1)金融機関等からの借入
被相続人の借金の残額と支払利息。
(2)国や自治体に納める税金や負担金の未納分
被相続人に所得税・住民税・固定資産税の未納があった場合のその金額。
(3)入院・治療費の未払分
入院費や治療費が未払いなら債務控除になります。(死亡診断書の支払いは葬式費用になります。)
(4)水道・光熱費の未払金
未払いの水道代やガス代、電気代も債務控除となります。他にも電話代などが該当します。
(5)事業上の買掛金・未払金
被相続人が事業を運営していた場合、それによって発生した買掛金・未払金は債務控除できます。
【債務控除の種類2:葬儀費用】
葬儀費用は相続財産から支払うことができます。
これは「葬儀費用は被相続人が自ら支払うもの」という考え方に基づきます。
被相続人が生前に残した借金は相続財産から差し引けるので、葬儀代も被相続人の債務として相続財産から支払う(差し引く)ことができるのです。
以下は控除対象となる葬式の費用です。
- ・遺体や遺骨の運搬費用
- ・葬式や葬送費用
- ・火葬や埋葬、納骨の費用
- ・お通夜などの経費
- ・お布施、読経料、戒名料
- ・納骨費用
- ・その他通常の葬式に伴う費用
【控除の対象にならないもの】
(1)お墓や墓地の購入費や借入料
お墓や神棚・仏壇・墓地などは「祭祀財産」と呼ばれる非課税財産です。相続開始後におけるこれらの購入費用や未払金は債務控除の対象になりません。
購入するのであれば、被相続人の生前にしておくべきです。
(2)保証債務
被相続人が他人の保証人として負う債務=「保証債務」は、控除することができません。
ただし、債務者が弁済不能等の事情がある場合は控除可能な場合もあります。
(3)団体信用生命保険付きの住宅ローン
住宅ローン等は被相続人の死亡と同時に保険金により返済されるため、債務になりません。
(4)消滅時効が成立した未払の飲食費等
飲食費は5年で時効が成立しますので、債務控除となるのは5年以内の未払い費のみとなります。
(5)確実と認められない債務
債務は存在するが金額が未確定なものを指します。よって、裁判係争中の債務などは対象外になります。
(6)その他、相続人が負担すべき債務
主なものを挙げると以下の通りです。
- ・相続財産の管理費用
- ・相続登記にかかる費用
- ・遺言執行費用
- ・遺産分割交渉に係る訴訟費用
- ・相続税申告を代行してもらうために税理士に払う費用
- ・戸籍謄本の取得代など
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相続税の節税をする場合、正しい税務知識と制度への理解が必要です。確実な節税を目指すのであれば、是非とも相続税の専門家に相談することをお勧めいたします。
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