戸籍の束が不要に? 法定相続情報証明制度とは

考える女性

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている 税理士 の古川顕史です。

相続手続きはやることが多く、かなりの労力を要します。

特に大変なのが戸籍の収集。故人の財産の名義変更等に必要となりますが、手続きの度に戸籍の束を窓口まで持っていかねばなりません。

多くの戸籍を持っていくのも大変ですが、いろんな手続きで戸籍謄本を使ったせいで、一部をどこかに置き忘れてしまうといった懸念もあります。

こういった点から、相続では「法定相続情報証明制度」があります。同制度を利用すると、数ある戸籍を一覧図としてまとめることができます。まとめてしまえば、書類としてはかなりスッキリしますよね。
 

【法定相続情報証明制度とは】

相続により取得した預貯金の解約や不動産の名義変更については、故人が亡くなったことと手続きをする方が相続人である事実を示すための戸籍謄本等が必要になります。

また、各金融機関や法務局で書類を提出する際には、原本が必要となります。(原本は手続き完了後に返してもらえます。)

この点から見れば、相続手続きでは戸籍謄本等を複数持っていなければなりません。少ない部数で対応しようとすると、他の手続きができないからです。

例えば、相続発生後に銀行で故人口座の解約手続きをする場合、戸籍謄本等一式の原本を提出しますが、原本返還は手続き完了まで待たなくてはなりません。返却に2週間ほどかかる場合もあるので、全ての手続きを同じ様にしていくと、相当な時間がかかってしまいます。

このような手続きの手間を減らすために、創設されたのが「法定相続情報証明制度」なのです。

法定相続情報証明制度では、故人と相続人の関係を法務局で証明してもらえます。戸籍の束を法務局に提出し「法定相続情報一覧図の写し」を交付してもらえば、たった1枚の紙で相続手続きができます

この制度は、2017年より開始されています。
 

【法定相続情報証明制度のメリット】

(1)「戸籍の束」を出し直す負担がなくなる

法定相続情報証明制度では戸籍謄本等と相続関係の一覧図を法務局に提出すれば、登記官の認証文が付された一覧図の写しが交付されます。

この一覧図によって、各種の手続きができるようになります。

相続での手続きは、原則として相続人自身がその相続の関係者である事実を申請先に証明しなければなりません。よって、戸籍謄本、改製原戸籍、除籍謄本などの多くの戸籍の取得が必要になります。

法定相続情報証明制度の開始前ですと、集めた戸籍謄本等の束を、金融機関など各種の窓口に何度も出し直す必要がありました。

しかし、法定相続情報証明制度のおかげで、一覧図の写しで代用できることになったので、戸籍の束をわざわざ持っていく必要がなくなりました。

(2)複数の手続きを同時進行しやすい

法定相続情報証明制度を利用しないと、複数の手続きがしにくくなります。

例えば、複数の銀行に預金口座がある場合、大手A銀行に戸籍謄本等の束を提出すると、手続き完了まで原本返却がされないので、B銀行、C銀行と他の窓口での手続きができません。

原本を増やせば良いのですが、そうなれば戸籍の束が増えていくので、管理が面倒になり、紛失のリスクも出てきます。

法定相続情報一覧図の写しですと、資料も1枚ですし、法務局で必要な枚数を交付できるので、手続きの同時進行がしやすいと言えます。

(3)戸籍よりも一覧図の方がわかりやすい

戸籍謄本は読むのがやや難しい書類のため、読み解くための時間が必要です。

しかし、法定相続情報一覧図の場合はわかり易く、確認作業に手間がかかりません。そのため、申請先でも事務手続きや確認作業が減り、結果として手続きの時間短縮になります。
 

【法定相続情報証明制度の注意点】

法定相続情報証明制度を利用する場合、法務局で手続きをしなければなりません。その手続きでは、戸籍謄本等の資料が必要になります。

よって、結局のところ、最初の1回は戸籍謄本等を頑張って集めなければいけないのです。

また、法定相続情報一覧図の作成は申請者自身が作成します。戸籍を読み解きながら作成していくので、場合によってはかなりの手間となる可能性もあります。

なお、申出人以外の一覧図の再発行請求は認められていない点にも注意です。
 

【制度利用の流れ】

(1)戸籍謄本等の必要書類を収集する

戸籍謄本は被相続人もしくは相続人の本籍地のある市区町村役場に申請し、取得します。市区町村役場の窓口に直接行ってもいいですし、郵送で請求しても大丈夫です。忙しくて取り寄せができないという場合、相続手続きの専門家に依頼しても構いません。

    必要な書類

  • ・被相続人の戸籍または除籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
  • ・被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • ・相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本(相続発生以降のものであること)
  • ・申出人の運転免許証・マイナンバーカードのコピー(氏名・住所確認用)

(2)法定相続情報一覧図の作成

被相続人と、戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図「=法定相続情報一覧図」を作成します。

書き方は法務局のWebページ「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」を参考にします。

(3)申出書の記入、法務局へ申出

申出書に必要事項を記入します。その後、戸籍謄本等・法定相続情報一覧図と一緒に管轄の法務局へ提出します。直接窓口に行かず、郵送での申請も可能です。(切手を貼った返信用封筒を準備しましょう。)

手続きが完了すると、法定相続情報一覧図の写しが交付されます。完了まで1〜2週間程度です。
 

【相続についてのお悩みは弊事務所までご相談を】

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60余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。

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投稿者: 古川顕史(公認会計士・税理士)

八王子相続サポートセンター センター長。 公認会計士・税理士。 早稲田大学商学部卒業 あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。 八王子相続サポートセンター所長 相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数。