相続で空き家を取得したら【売却益から3000万円控除できる特例とは】

空き家

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。

相続では親が住んでいた住宅を引き継ぐ場合もあります。
誰かが住めれば良いですが、空き家となる可能性もあります。

特に注意したいのが老朽化した空き家。
倒壊などのリスクがあるため、放っておくと非常に危険です。

実際に国内では、利用予定のない空き家が300万戸以上あるとされており、問題になっています。

このような背景から、相続や遺贈で取得した空き家を売却する際に、譲渡所得から最大で3000万円を控除できる制度が設けられています。

耐震性能や売却金額などの細かい要件がたくさんありますが、空き家を相続する予定の方は、活用を検討すると良いでしょう。
 

【空き家を放置する危険性】

家は適切に管理されていないと劣化も進んでいきます。老朽化してしまうと倒壊し、怪我や死亡事故に繋がる危険性があります。

また、害虫や害獣の住処となり、周辺環境の悪化を招きます。これらが起これば、近隣の住民に迷惑がかかり、損害賠償を請求される恐れも出てきます。

また、人が住んでいないことで、不法侵入や不法滞在が起こりやすく、犯罪を誘発する可能性もあります。

このように空き家を放置すると様々なリスクが発生してしまいます。そのために適正に管理する必要がありますが、ご自身で管理する場合でも、管理代行サービスを使う場合でもコストがかかってしまいます。

そのため、住む予定が無く、また活用もしない空き家については売却などによって処分することを考えましょう。そして、売却を考えるのであれば、「空き家特例」の活用も検討すべきです。
 

【最大3,000万円控除の空き家特例とは】

この制度は、相続あるいは遺贈によって取得した被相続人が居住していた相続不動産について一定期間内に売却すると、譲渡所得額から最高3000万円を控除できるものです。

正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。

控除額が3,000万円と高く設定されていますが、空き家の条件、売却時の状況等、制度要件が細かく決められていることに注意しましょう。なお、税制改正によって令和6年1月1日以後、この特例の適用対象となる譲渡については範囲が拡大されました。

ただし、対象の土地家屋を取得する相続人が3人以上の場合、特別控除額は2,000万円に減ります。

譲渡所得額は以下の計算式で算出します。
譲渡取得=譲渡価格(収入金額)−必要経費(取得費+譲渡費用)−特別控除額

  • ・取得費…不動産購入費用、手数料、その後支払った改良費の合計額。
  • ・譲渡費用…不動産売却で支出した費用。仲介手数料や測量費等。

もし、不動産の取得費がわからない場合、譲渡価額の5%を概算取得費としても構いません。
 

【空き家特例の要件】

(1)対象となる家屋の要件

  • ・相続開始前に被相続人が一人で暮らしていた自宅
  • ・1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた区分所有建築物以外の建物
  • ・相続時から売却時まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと(ずっと空き家だった)
  • ・対象の家屋は相続や遺贈によって取得された

この空き家特例は空き家になった相続不動産の売却を促進する特例です。よって、対象となる住宅は、「故人が一人で暮らしていた自宅のみ」となります。相続後、人に住まわせたり、事務所として扱ったりしてはいけません。

ただし、「被相続人が介護保険法に規定する要介護・要支援認定を受け老人ホーム等に入所し、かつ、相続開始直前まで老人ホーム等に入所していた。」、「老人ホーム等への入所時から相続開始直前まで、その家屋について、被相続人による一定の使用がなされ、かつ、事業、貸付、被相続人以外の居住の用に供されていたことがないこと。」に該当すれば、被相続人が相続開始の直前に居住していたものとして認められます。

また、対象不動産は1981年5月31日以前に建てられたものに限定されます。要するに昔の耐震基準で建てられた家が対象です。昔の耐震基準で建てられた家は倒壊リスクが高く危険だからです。

なお、不動産はそのまま売却しても、特例が適用されません。耐震補強もしくは更地にして売却します。ただし、現行の耐震基準を満たしている場合にはそのまま譲渡しても特例が適用できます。

(2)譲渡する際の要件

  • ・譲渡対価額の合計は1億円以下であること
  • ・耐震リフォーム済もしくは建物を取り壊した状態で売却する
  • ・相続開始から3年を経過した年の12月31日までに売った
  • ・相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、ほかの特例の適用を受けていない
  • ・売却先は子供や配偶者以外の第三者であること

空き家特例が適用できるのは売却金額が1億円を超えない建物もしくは土地です。売却が複数回にまたがる場合は、各売却の合計金額で判断します。所有者が複数いる場合にも、その合計金額となります。

特例を適用するには譲渡の際に耐震リフォームをするか、空き家を取り壊して更地にした状態で売らなければなりません。(現行の耐震基準を満たしている場合にはそのまま譲渡しても可。)

しかし、2023年度の税制改正により、2024年1月1日以後の譲渡については、譲渡した年の翌年2月15日までにリフォームや取壊しが完了した場合、特例は適用されます。
 

【あくまで対象は自宅のみ】

本特例における対象物件は、相続開始前に故人が一人で住んでいた家屋です。したがって、居住用でない事務所や倉庫については、特例が適用されません。

また、相続または遺贈によって取得した空き家でないもの。つまりすでに生前贈与がされていて、所有者が居住者以外である場合も、同様に特例の適用は受けられません。
 

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投稿者: 古川顕史(公認会計士・税理士)

八王子相続サポートセンター センター長。 公認会計士・税理士。 早稲田大学商学部卒業 あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。 八王子相続サポートセンター所長 相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数。