こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
前回のコラムで生前贈与の控除制度の一つである「結婚・子育て資金の一括贈与」についてご紹介いたしました。
同制度は非課税枠も大きいのでとても良いものに見えますが、デメリットも存在します。
よって、活用前に状況の検討および受贈者との調整が必要不可欠です。
本コラムでは制度に関するメリットとデメリットを詳細に解説いたします。是非ご参考ください。
目次
【結婚・子育て資金の一括贈与とは】
前回のおさらいになりますが、同制度は孫や子ども等の直系卑属に対して1,000万円までの一括贈与が非課税になるというものです。
贈与されたお金は結婚と子育てに関することにのみ使うことができ、2021年3月31日まで利用できます。(税制改正で適用期間が2年延長となっています。)
【結婚・子育て資金の一括贈与のメリット】
(1)まとまった贈与が可能
毎年110万円まで非課税となる暦年贈与と違って、要件を満たせば1,000万円まで一括の贈与が可能です。暦年贈与で9年はかかることを単年で実現できることは大きな利点です。
(2)暦年贈与と併用可能
結婚・子育て資金の一括贈与は暦年贈与と併用することができます。
一括贈与とは別に、暦年贈与の非課税枠を利用して毎年110万円を孫や子どもに渡しても大丈夫です。
(3)3年以内の相続税課税対象
暦年贈与は、相続開始前3年以内のものについては相続税の課税対象とされてしまいます。
しかし、結婚・子育て資金の一括贈与については、相続開始前3年以内であっても相続税の課税対象外となります。(非課税適用となった金額のみ有効。)
(4)相続税の2割加算の対象外
結婚・子育て資金の一括贈与については、受贈者が50歳になった時点で贈与財産の残額(使い切れなかった資金)に対して贈与税がかかります。
ただし、その前に贈与者が亡くなった場合、残額は遺贈扱いとなり、相続税が課税されます。
ここで問題となるのが、相続税の「2割加算」。
祖父母の財産を孫が相続で取得した場合、通常の相続税額に対して2割分の金額が加算されます(相続人が代襲相続人であるなら2割加算はされません)。
ですが、結婚・子育て資金の一括贈与の場合は、2割加算の対象外となります。
【結婚・子育て資金の一括贈与のデメリット】
(1) 使い切れなかったお金に贈与税がかかる
同制度は、前述した通り受贈者である孫や子どもが50歳になった時点での贈与残高に対して贈与税が課税されます。
贈与されたお金は結婚・子育て資金にしか利用できないため、贈与額が大きすぎると使いきれないケースも多々あるでしょう。
教育資金の一括贈与もそうですが、非課税枠が大きいからといって使い切れない高額の贈与を行うと、受贈者が高い税金を支払うことになることに十分留意しましょう。
(2)口座開設に手間がかかる
同制度を利用するためには、金融機関に専用口座を開設する必要があります。
普通預金口座とは扱いが違うため、開設までに時間と手間がかかります。また、一度贈与したお金の払い戻しはできません。
贈与金を預金している口座の解約にも
- ・受贈者が50歳になる
- ・受贈者が亡くなる
- ・口座の預金残高が0円となる(資金を使い切る)
いずれかの条件がないと口座解約ができません。
(3)領収書等が必要になる
贈与されたお金は結婚か子育てにしか使うことができません。そのため、払い出しを行うには、用途を証明するための領収書の提出が必要です。
つまり、払い出しにもそれなりの手間がかかるということです。
【そもそも結婚や子育て資金の都度贈与は非課税】
教育資金の都度贈与と同じように結婚・子育て資金の都度贈与は非課税です。
祖父や両親は扶養義務者に当たるので、結婚や子育てに関して必要な資金を都度渡すことは課税対象ではないということです。
つまり、必要なときに贈与を行えるのであれば、同制度を使うメリットはそれほどありません。
【結婚・子育て資金の一括贈与についてのご相談】
結婚・子育て資金の一括贈与について詳しく知りたい方、相続に関してのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。
70余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。