こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
過去のコラムで通常の相続財産とは分けて扱われるものとして「祭祀財産」をご紹介いたしました。
お墓や仏壇といった先祖や神仏を祀るための祭祀財産は相続財産には当たらず、相続時に課税されません。
今回と次回の計2回に分けて、この祭祀財産について詳しく解説していきます。
【祭祀財産とは】
祭祀財産とは,大きく分けて「系譜」「祭具」「墳墓」の3つになります。
系譜とは、歴代の家長を中心に祖先伝来の家系を表示するものでいわゆる家系図に当たります。
祭具とは、祖先を祀るもしくは礼拝の用に供されるためのもので、仏壇や神棚、位牌、十字架等が当たります。基本的に祭祀に必要であるもの全てが当てはまりますが、仏間などの建物は該当しないので注意しましょう。
墳墓とは、遺体や遺骨を葬っている土地に付着する設備で、墓石や墓碑が含まれる他、霊屋や墓地も該当します。墓地については、「墳墓と社会通念上一体のものと捉えられる程度に切っても切れない関係にある範囲の墳墓の敷地である墓地」に限定されています。
【遺体や遺骨は祭祀財産なのか】
被相続人の遺体や遺骨についてはまだ断定できるものではありませんが、「慣習上の祭祀主催者に帰属する」と最高裁が判断した例があります(最高裁平成元年7月18日判決)。
そもそも遺骨が所有権の対象=モノとして扱うことが疑問ですが、前述の判例では埋葬・管理・祭祀・供養の範囲でモノとして扱われています。
【相続との関係】
民法第897条にもありますが、祭祀財産は「民法第896条の規定(相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。)に関わらず、慣習に従って祖先に関する祭祀を主宰すべき者が承継する」ことになっています。
これは祭祀財産が相続人同士で分割して相続される財産ではない=遺産分割の対象ではないということになり、金額を評価して相続税の申告をすることも不要です。
【祭祀財産の承継には管理ができる方を】
前述した民法第897条の規定通り、祭祀財産の承継は「祭祀を主宰すべき者」が行い、承継者は慣習に従って決定しますが、被相続人の指定がある場合はそれに従います。一般的には被相続人の長兄に承継されることが多いですが、被相続人の家族の同意書があれば、被相続人の親族や友人が祭祀継承者になることも可能です。
被相続人の指定がなく、慣習も不明確で、遺族の中で意見がまとまらない場合には、家庭裁判所に判断を委ねます。
いずれにせよ、祭祀財産は先祖代々受け継がれてきた大切なものなので、祭祀継承者にはきちんと管理できる方を選ぶべきです。
【相続手続きについての問い合わせ・ご相談】
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次回のコラムでは祭祀財産の承継について、その方法と注意点について解説いたします。