こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
「相続税が高すぎて、相続税が支払えない…」このようなケースは相続では起こりうることなのです。
例えば、相続財産に現金や預貯金が全くなくて、土地や建物といった不動産が複数ある場合。不動産は高価なものが多く相続税自体も高めになりがち。しかも、すぐに売却してお金に換えるのが難しい面もあります。となれば、納付期限までに相続税が支払えないという事態になってしまいますよね。
このような場合、一体どうすれば良いのでしょうか。
そこで本記事では、相続税が払えない場合にはいくつかの対処法があります。
目次
【相続税はどういう場合に発生するのか】
相続においては、相続税がかかる人はそこまで多いわけではありません。国税庁のデータによれば、令和元年分の相続税の申告については、被相続人が約138.1万人のうち相続税のかかったのは約11.5万人だったそうなので、割合でいえば12人のうち1人が相続税を負担していることになります。
この理由としては、「相続税の基礎控除額が大きい」ことが挙げられます。
税制改正により以前より金額は引き下げられたものの、改正後も「3000万円+法定相続人の数×600万円」の控除額が認められているからです。つまり、最低でもこの控除額を超えないと相続税は発生しません。
【相続税が支払えないケースとは】
決して多くはありませんが、相続税は発生しますし、その中でも相続税を支払えなくなるケースもあり得ます。
相続税が払えなくなるケースとしては以下のものが予測できます。
- ・相続財産の中に相続税を支払うだけの現金がない
- ・相続財産に占める不動産の割合が多い
- ・相続人に資力がない
相続税が如何に高額であっても、遺産の中身が現金だけであれば、問題ありません。
ですが、相続税がかかる財産は現金に限らず、土地や建物といった不動産、自動車などの動産も対象です。特に不動産はすぐの換金が難しいものなので、「高額の相続税が生じるにも関わらず相続税を支払えない」という事態を招きやすいと言えます。
特に相続人が専業主婦で夫が複数の不動産を所有されているケースなどは要注意です。
【相続税が払えないとどうなる?】
相続税は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納付を行います。納付は現金にて一括で納めます。
もし、期限までに納付できない場合には、ペナルティとして延滞税が課税されます。
税率は下記の2段階。
納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降:8.8%
※上記は令和3年1月1日~令和3年12月31日中に適用される数値。特例基準割合(銀行の新規の短期貸出金利の平均値をもとにした割合)によっては変動する可能性あり。
相続税を支払えずに、滞納し続けていると、国税庁に財産を差し押さえらる怖れもあります。差し押さえられるのは不動産が多いですが、自動車や骨董品などの動産の場合もあります。
さらに税務当局が納税が不可能と判断した場合には、他の相続人に税金が負担されることになります。同じ被相続人から相続した遺産の相続税については、「連帯納付義務」といって相続人全員で納付義務が生じるからです。
したがって、相続税が支払えなくなると、他の相続人にも迷惑をかけることになります。
【相続税が払えない場合の対処】
(1)延納制度の利用
「延納制度」とは、相続税を分割して納付する制度です。「期限までに一括納付が原則」の相続税を分割納付するので、適用には条件があります。
- ・金銭での一括納付が困難な事由がある
- ・相続税額が10万円を超える
- ・延納税額に相当する担保を提供する
以上の条件を満たした上で、期限内に申請書や関係書類を提出します。許可が下りれば、相続税を年払いで納付することになります。
延納期限は原則として5年以内ですが、相続不動産の占める価格の割合によっては最長20年まで期限延長することも可能です。
延納制度を活用すれば、相続税の一括納付を免れますが、延納中は当然ながら利子税がかかります。経済的に余裕を持って相続税を支払える反面、利子税の分だけトータルで払う税金は高くなります。
延納制度はこちらでも解説していますので、ご一読ください。
(2)物納制度の利用
前述した分割払いでの延納すら困難な場合には「物納制度」が利用できます。
物納制度とは、延納制度と同じように納付困難な金額の範囲内において、金銭以外の相続財産により相続税を納める制度です。
- ・物納財産に適用されるのは、相続財産のみ
- ・物納に充てられる財産は決まっている
- ・それぞれの物納財産には優先順位が設けられている
といった条件があります。
物納制度では、国が財産の換金処分を行うので、お金に変えやすい財産が優先的に充てられます。不動産や国債証券・上場株式等は優先度が高く、非上場株式や動産は順位が低いのです。
なお、物納財産の評価額は、相続税評価額と同じなため、不動産は時価よりも安価になりやすいと言えます。よって、ご自身で手間をかけて現金化し、相続税を納めたほうが得な場合もあります。
物納制度はこちらでも解説していますので、ご一読ください。
(3)相続不動産の売却
都心・駅近など需要の高い不動産ならば、買い手もつきやすいでしょう。その場合は、相続不動産を売却したお金で、相続税を支払うことができます。
ただし売却は、相続開始から10ヶ月以内の納付期限内にしなければならないので、安く買いたたかれる可能性もあります。
もし、不動産を売却できそうにない場合、相続税の支払いができず、滞納することになってしまいますので、延納制度の手続きを準備しておくなど、他の対策を用意しておきましょう。
(4)金融機関からの借入
不動産の売却が難しい場合には、金融機関で借り入れを行い、そのお金で相続税を支払うという選択もあります。借入の担保には相続不動産を活用すれば良いのです。
借入なので、利息が付きますが、前述した延納制度と比べて利率が安くなるケースもあるので、その場合には有効な方法となるでしょう。
なお、金融機関や相続人の状況によっては、借入を行う際の審査や利率の条件も異なります。
(5)相続放棄
相続放棄とは、自己の相続権を手放すことです。遺産を一切引き継がないので、相続税の支払いもしなくて良くなります。
ただし、熟慮期間内に手続きを行わなければ成立しません。熟慮期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」です。
また、一度成立すると、基本的に取り消しができないので、十分な検討が必要です。
※こちらも併せてお読みください。
【どの対策が良いかはケース次第】
前述した対策のうち、どの方法がベストかは各相続の状況によります。相続人に定期的な収入があるのか、相続不動産の市場価値はどうか、不動産を手放しても良いのかなど、色々なケースがあるので、できれば専門家に相談しつつ、適切な対策を探した方が良いでしょう。
ただ、対策は早いうちにしておくべきです。相続が始まった後では時間も限られるので、打てる策の幅が狭くなってしまうからです。
よって、専門の税理士への相談も、早い段階のうちに行いましょう。早期に相続税のシミュレーションや対策を立てておけば、相続開始後の手続きも円滑になり、慌てることはなくなります。
【相談する税理士は要検討】
国内には多くの税理士がいますが、各税理士が得意にしている分野はバラバラです。
税理士になるには国家試験に合格しなければなりませんが、その中には選択科目があります。選択必須科目が「所得税法」か「法人税法」のどちらか1科目で、残り2科目を「相続税法」「消費税法」「事業税法」「国税徴収法」「酒税法」「住民税」「固定資産税」から選びます。
つまり、相続税を選択しないで試験に合格した税理士もいるのです。
また、相続税を勉強したにも関わらず、資格を取得した後、全く経験を積んでいないケースもあります。
相続ではいろんなパターンがありますから、知識はもちろん、豊富な実績がなければ、適切な節税対策ができません。そうなれば、本来払わずに済んだ税金を支払う事態となり、依頼側が損をしてしまいます。
税理士の得意分野や実績は、HPをチェックしたり、無料の初回相談で質問すればわかります。
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