こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
相続税の対策として生前贈与という手段があります。
当HPのコラムでも何回かに渡って生前贈与の控除制度についてご紹介いたしました。
ただ、相続税対策として生前贈与を活用するかどうかについては、現在の財産の状況や後の相続発生時の状況、贈与を行う相手等、各ケースをよく検討した上で実行することが大切です。
この記事では、特に注意が必要な不動産の生前贈与について解説いたします。
不動産の生前贈与は場合によっては、その行為が原因で相続時の税額が高くなることもあるので、是非参考にしてください。
目次
【不動産の生前贈与に関する注意点】
(1)不動産取得税がかかる
不動産取得税とはその名前の通り、家や土地を取得した場合にかかる税金のことです。
取得した不動産の固定資産税評価額について4%が課税されます。不動産の取得が2021年3月31日以前であれば3%の課税となります。
尚、相続手続きで遺産として相続した不動産は、課税の対象外です。
(2)登録免許税が高くなる
登録免許税は不動産の登記等に対して課税される税金です。
贈与の場合は、固定資産税評価額に対して2%が課税されます。(詳細を述べると土地の所有権移転登記が2.0%、住宅用家屋を新築した場合の所有権保存登記が0.4%、中古住宅などの所有権移転登記は2.0%です。)
相続時でもこの登録免許税は課税されますが、0.4%のため生前贈与の方が税率は高いといえます。
尚、不動産取得税も登録免許税もそれぞれ軽減措置が用意されているので、該当するものがないか確認するようにしましょう。
(3)相続手続きのみ有効な特例制度が活用不可
特に注意したいのが「小規模宅地等の特例」です。
同制度は自宅に関する不動産の評価額を330㎡まで8割減額できる特例制度です。
適用できるのは、配偶者、同居している親族、家を持っていない親族のいずれかですが、配偶者以外は、 生前贈与の特例である「住宅取得等資金の贈与税の非課税」を適用して自宅を取得すると、小規模宅地等の特例の対象外となります。
配偶者は両制度の併用が可能ですが、贈与用と相続用の土地が必要です(一つの土地の持分を分けても可能)。
【相続時の控除制度との比較】
不動産の相続手続き時に活用できる控除制度は小規模宅地等の特例以外に以下のものもあります。
- ・相続税の基礎控除
- ・配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)
相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」であるので、最低3,600万円までは控除されます。
また、配偶者の税額軽減は、配偶者が相続した遺産の額から配偶者の法定相続分もしくは1億6000万円のいずれか大きい方の金額を控除する制度です。
これらの控除金額を考慮すると、ほとんどの相続のケースでは配偶者は課税を抑えられるということになります。よって、不動産を生前贈与する場合には、前述の不動産取得税や登録免許税の増加分に加えて相続時の控除分すら上回るメリットがある場合ということになります。
例としては、贈与対象の不動産から得られる収益がある場合や、相続時に不動産が大幅に値上がりすることが予想される場合等です。
ただし、繰り返し述べている通り、各ケースの状況を慎重に検討することが大切ですので、安易な行動でお金を損しないように注意しましょう。
【不動産の生前贈与・節税についてのご相談】
不動産の生前贈与・節税についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。
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