こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
民法では、法定相続人の権利として、被相続人との関係に応じて相続財産の一定割合を最低限受け取ることができる遺留分が認められています。
仮に、遺言によって本来自分がもらえる遺留分がもらえずに他の法定相続人に分配されてしまったとしても、自分の遺留分を余計に相続した他の法定相続人に請求して、それを取り戻すことができるのが「遺留分減殺請求」という手続きです。
このたびの民法改正で、相続に係る法律上の定めの見直しがあり、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)についても変更がありますので、その概要と留意点をご紹介いたします。
【民法改正と遺留分減殺請求の見直し】
その人が法定相続人である場合、民法上、それがどんな人であっても法定相続人として遺留分が認められます。
遺留分は、下記の割合が民法で定められています。
配偶者と子ども:本来の法定相続分×1/2
法定相続人が直系尊属(被相続人の父・母)のみの場合の直系尊属:本来の法定相続分×1/3
被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
この遺留分は、被相続人が遺言で遺留分も相続させないと定めても、その部分は無効となり、遺留分を他の法定相続人に請求することができます。
【遺留分減殺請求の問題点と法改正による見直し】
現行の民法における遺留分減殺請求については争族に発展しやすいと言われています。
それは、遺留分減殺請求が起きると、相続財産が共有状態におかれ、そのうえで遺留分を算定することになります。
この場合で相続財産が現預金だけならば、キレイに計算して分割できますが、不動産が含まれていると分割しなくてはなりません。
このため、問題の解決までに時間と手間とお金がかかる事態になり、家族・親族間で訴訟に発展して、相続が争族化してしまうことが多いのです。
そこで、このたびの民法改正で遺留分減殺請求の制度の見直しが図られました。
ポイントは、これまで「遺留分減殺請求」と呼んでいた手続きが、「遺留分侵害額請求」の手続きに改められることです。
現行法では、現預金や不動産のすべてを共有財産として把握して、これに対して遺留分を算定し、必要に応じて不動産を分割する手続きを経なくてはならなかったものが、法改正後は遺留分を他の相続人に持っていかれていた(侵害されていた)相続人は、遺留分相当額を他の相続人に金銭で支払うことを請求できることになったのです。
これにより、他の相続人は、不動産の分割手続きを経ることなく、遺留分侵害額を請求した相続人に金銭で支払えば完了となります。
また、この場合で、すぐに現金が調達できないときは、支払期限の延長も認められる見込みです。
このように、法改正によって、遺留分の請求によって相続が争族化する危険性は低くなるかも知れませんが、やはり、事前に遺留分にも配慮して争族化しない相続のあり方を決めておくことが、残された家族の幸せになるのではないでしょうか。
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