2025年最新版 住宅取得等資金贈与に使える非課税特例とは

住宅資金

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。

もし親から「家を買う資金を援助してあげるよ」と言われたら、それはとてもありがたい話です。住宅はとても高価なもので、東京都でもおおよそ戸建で4,000〜5,000万円ほどかかります。

ただし、援助を受ける際に気になるのが「贈与税」です。高額な住宅資金をもらった場合、当然ながら基礎控除を差し引いた部分に贈与税がかかります。

もし、4,000万円を一括でもらった場合、贈与税は1,530万円になります。
※贈与額4,000万円-基礎控除額110万円= 課税価格3,890万円×税率50%=1,945.0万円-控除額415万円=贈与税額1,530万円

この場合に活用したいのが「住宅取得等資金の贈与に関する非課税の特例」です。

これは、親や祖父母などの直系尊属から住宅を取得するための資金をもらった際に、条件を満たせば一定額まで贈与税が非課税になるという制度です。非課税額は最大1,000万円と非常にありがたい制度になります。

今回はこの特例について、仕組みや注意点をわかりやすく解説します。

【どんな制度なのか】

住宅取得等資金の贈与の非課税特例とは、親や祖父母などから住宅を買う・建てる・増改築するための資金をもらったときに、一定額までは贈与税がかからないという制度です。

住宅の種類によって以下の通り、非課税額が変わります。

  • 省エネ基準等を満たす住宅→最大1,000万円
  • 上記以外の一般住宅→最大500万円

例えば2,000万円の省エネ住宅を建てた場合、以下のように贈与税が軽減されます。

  • ・制度を利用した場合
2,000万円-1,000万円(住宅取得資金の非課税枠)-110万円(暦年贈与の基礎控除額)=890万円
890万円×30%-90万円(贈与税の基礎控除額)=177万円
  • ・制度を利用しない場合
2,000万円-110万円(暦年贈与の基礎控除額)=1,890万円
1,890万円×45%-265万円(贈与税の基礎控除額)=585万5,000円

制度利用によって、400万円近い節税となります。

【どんな条件があるのか】

(1)贈与を受ける人(受贈者)の条件

  • ・贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上
  • ・贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下
  • ・贈与者の直系尊属(親や祖父母)からの贈与であること
  • ・贈与を受けた日が居住の開始前であること
  • ・贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与金の全額を使って住宅を取得する
  • ・贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅に居住する

(2)住宅の条件

  • ・日本国内の住宅であること
  • ・住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であること
  • ・建築後誰にも使用されていない新築住宅
・中古住宅の場合は昭和57年1月1日以後に建築されていること
  • 
・上記以前の建築物の場合、耐震基準に適合していること

増改築の場合、

  • ・後の住宅用家屋の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること
  • ・床面積の1/2以上が受贈者の居住用に使用されている
  • ・増改築される住宅が受贈者の所有になっている
  • ・増改築等工事が、居住している家屋に対して行われたものであると「増改築等工事証明書」などの書類で証明されている
  • ・増改築等にかかる費用が100万円以上
  • ・増改築等費用の2分の1以上が居住用に使われている

(3)手続き上の条件

  • ・贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出すること
  • ・非課税の特例を使いたい旨を申告書に明記し、必要書類(登記事項証明書、契約書の写し、住民票など)を添付すること

【省エネ等住宅とは】

省エネ等住宅とは、以下の3つの条件のうち、どれか1つに該当するものです。

  • ・断熱等性能等級5以上かつ、一次エネルギー消費量等級6以上である
  • ・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が2以上または免震建築物である
  • ・高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上

つまりは、断熱、省エネ性能として優れている他、耐震性やバリアフリー性に優れている住宅がこの制度の対象です。

【注意すべきポイント】

この特例には期限や条件が細かく設定されています。特に注意したいのは以下の点です。

資金の使い道が限定されている
「住宅の取得・新築・増改築のため」に使うことが条件です。単に現金を贈与されただけで、この目的に使っていない場合、非課税は適用されません。

実際に住むことが前提
取得した住宅に実際に住まなければ、特例の適用は取り消されます。投資用不動産の購入や、将来のために購入してもすぐに住まない場合などは対象外です。

期限とタイミングが重要
契約日や居住日、申告期限などには細かな期限があります。スケジュール通りに進めないと特例が使えないこともあるので、必ず事前にスケジュールを確認しましょう。

【この制度は使うべきです】

この非課税特例は、親世代が子や孫の住宅取得を支援したいと考えているなら、非常にメリットの大きい制度です。贈与税を気にせず、堂々とまとまった資金を受け取れるのは大きな魅力です。

ただし、条件をひとつでも外すと使えなくなるため、自己判断せず、必ず事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

【贈与税・相続税対策は八王子相続サポートセンターへ】

「住宅取得等資金の贈与の非課税特例」は、親や祖父母からの援助で住宅を取得する人にとって、非常にありがたい制度です。条件をきちんと確認し、期限を守って申告することで、贈与税を払うことなく数百万円〜1,000万円の援助を受けることも可能です。

家を買うということは人生の大きな決断です。税制をうまく活用して、より安心・安全な住まいづくりを実現しましょう。

贈与税・相続税についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。

60余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。

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投稿者: 古川顕史(公認会計士・税理士)

八王子相続サポートセンター センター長。 公認会計士・税理士。 早稲田大学商学部卒業 あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。 八王子相続サポートセンター所長 相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数。