こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
「弔慰金」というお金を知っていますか。
弔慰金とは、故人の遺族に対して国や会社から支給されるお金であり、慰謝料的な性質を持ちます。国から支払われるケースとしては、戦争で亡くなった場合や、災害で亡くなった場合が主です。(適用される金額や支給条件は異なります。)
会社の弔慰金については、故人が所属していた会社の就業規則の規程等によって支払われます。そのため、会社ごとで弔慰金の金額や支給条件が変わります。
いずれにせよ、故人の死を悼み、その遺族を支援する目的は同じです。この弔慰金は「基本的に」相続税がかかりません。しかしながら、相続税がかかってしまう場合もあるので注意が必要です。
目次
【会社からの弔慰金について】
弔慰金については、国よりも企業から払われるケースが圧倒的に多いです。
会社からの弔慰金とは、所属する社員本人が死亡した際に遺族に対して、あるいは社員の家族が死亡した際に社員に対して会社が支給する一時金や花輪代等(もしくはそれらを規定した制度自体)を指します。
弔慰金は会社が独自に定める福利厚生の制度であるため、弔慰金の支給条件や金額は一律ではありません。細かい設定は就業規則の慶弔見舞金規程などに決められていることがほとんどです。
なお、弔慰金は香典とは異なります。
香典とは葬儀の参列者が喪主に渡し、霊前に供える金銭です。「会社からの香典」の場合、渡されるお金は役員や他の社員の自費です。代表者がまとめて葬儀や告別式の際に喪主に手渡します。
【弔慰金と相続財産の区別】
相続税は、故人(被相続人)の財産を相続もしくは遺贈によって取得した場合に課税される税金です。しかし、弔慰金は相続財産とは異なる性質を持つため、相続税の対象とはなりません。
先にも説明した通り、弔慰金は故人の勤務先や団体などの第三者が遺族の生活支援・慰謝のために支給するものです。そのため、相続財産とは区別され、相続税の課税対象外とされるのです。
もし弔慰金に相続税が課せられると、遺族が実質的に受け取る金額が減少し、社会的な公平性を損なう可能性があります。その意味でも、相続税対象としていないのです。
【弔慰金についての所得税法・相続税法での取り扱い】
相続税法第12条および所得税法では、弔慰金の性質について以下のように規定されています。
- 業務上の死亡の場合:弔慰金額が「通常支払われると認められる金額」の範囲内であれば、相続税は課されません。この「通常支払われる金額」とは、具体的には「給与の3年分」です。
- 業務外の死亡の場合:弔慰金の額が「給与の6か月分」までであれば、相続税が非課税となります。
つまり、弔慰金は基本的には相続税課税の対象外ですが、上記の範囲を超える金額については、通常の相続財産として取り扱われ、相続税の対象となります。
過剰な金額は相続税の課税対象となってしまう点には注意しましょう。
【弔慰金の具体的な取り扱い例】
例えば、ある企業が社員の死亡に際して、遺族に対して弔慰金を支給した場合、その額が業務外の死亡なら6か月分の給与まで、業務上の死亡なら3年分の給与まで相続税の課税対象外となります。
仮に被相続人の月給が30万円であった場合、
- 業務外の死亡の場合:30万円×6か月=180万円まで非課税
- 業務上の死亡の場合:30万円×36か月(3年)=1,080万円まで非課税
これを超える金額が支給された場合、その超過分は相続財産として相続税の課税対象となります。
遺族の生活保障、故人の遺族が経済的に困窮しないようにするための支援金としての側面があるため、一定額まで非課税とされています。
しかしそれを超える分は相続財産にカウントされ、相続税課税対象となります。
【弔慰金と死亡退職金の違い】
弔慰金と似たものとして、死亡退職金があります。
死亡金とは、故人が生前に勤務先に対して持っていた退職金請求権に基づくものです。つまりは、故人に本来支給されるはずだった退職金を、遺族に払うのです。
死亡退職金は、税法では被相続人の財産(みなし相続財産)とみなされ、相続税の課税対象となります。しかしながら、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠も用意されています。
これは、死亡退職金も遺族の生活保障を目的として支給されるからです。
一方、弔慰金は会社の裁量で支給されるものであり、基本的に相続財産には含まれず、相続税課税対象でもありません。
ただし、支給金額が社会通念上の範囲を超える場合、課税対象となるため注意が必要です。
【まとめ】
弔慰金が相続税の課税対象とならない理由は、その性質が慰謝料的かつ遺族の生活支援を目的としているためです。
ただし、一定の基準内であれば非課税ですが、基準を超えた場合には課税対象となるため、注意しましょう。
また、弔慰金と死亡退職金は取り扱いが異なるため、それぞれの違いを理解しておくことも大切です。遺族にとって大切な支援となる弔慰金について、適切な知識を持ち、適用範囲を正しく理解することが重要です。
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