「受遺者」とは 相続人との違いは何か

遺言書

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。

相続では遺産をもらえるのは相続人だけではありません。それが「受遺者」という存在です。相続人と比べて聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。

今回は、受遺者について解説いたします。相続人との違いや相続における注意点も述べていますので、参考にして頂ければ幸いです。

【遺言で指定される受遺者とは】

受遺者とは遺言によって遺産をもらう方を指します。通常、被相続人の血族関係者でない方、例えば友人や会社の同僚などは、法定相続人ではないので、遺産を得る権利はありません。

しかし、遺言によって遺産を渡すことを指定しておけば、受遺者として遺産をもらうことができます

なお、遺言によって財産を人に渡すことを遺贈と言います。遺贈する相手は遺言者が自由に選べます。法定相続人を選んでも良いですし、それ以外でも構いません。
受遺者に指定された人は遺産をどう受け取るかによって「特定受遺者」か「包括受遺者」かに区分されます。包括受遺者はさらに細かく四つに分類されます。

それぞれの特徴については次で解説します。

【受遺者の種類とは】

(1)特定受遺者

特定受遺者とは、遺言書の中で受け取る財産について指定された方です。その名前の通り、特定の財産を受け取る人を指します。

例えば、遺言書に「Aには預金口座より100万円を渡す」と書かれている場合、Aさんは特定受遺者として、被相続人の口座より指定の額を受け取ります。

特定受遺者はもらう財産が指定されているので、遺産分割協議に参加する必要がありません。また、借金などのマイナスの遺産を引き継ぐ必要もありません。

相続人でなければ、あくまで指定された遺産のみを受け取ります。

(2)包括受遺者

包括受遺者は、特定の遺産をもらうのではなく、遺産の全部あるいは一部を一定割合で受け継ぐ方を指します。

特定受遺者とは異なり、譲渡財産の内容は指定されません。例えば遺言が「全財産をAに渡す」や「全財産の3分の1はBに遺贈」といった内容であれば、それは包括遺贈に該当します。

包括受遺者は、金銭や不動産などのプラスの遺産だけではなく、借金などのマイナスとなる遺産も取得しなければなりません。そのため、故人の負債が高額であった場合、遺贈によって損をするケースもあります。

包括受遺者は細かく4つのタイプに分かれます。
それぞれの名前と特徴は以下の通りです。

  • 全部包括受遺者‥故人の遺産全てを受け継ぎます。遺言書で「全財産を○○に遺贈する」と書かれていれば該当します。
  • 割合的包括受遺者‥故人の遺産について特定の割合分をもらう方です。「遺産の1/3を○○に遺贈する」等、といった場合が該当します。
  • 特定財産を除いた財産についての包括受遺者‥これは他に特定の財産を受け取る特定受遺者がいるケースのみに該当します。例えば、「Aに不動産を渡す。Bには残りの財産の半分を渡す。」と遺言に書かれている場合、Aさんは特定受遺者、Bさんは特定財産を除いた財産についての包括受遺者となります。
  • 清算型包括受遺者‥遺産を売却・処分し、その代金の一部を受け継ぐ方を指します。相続不動産を売却した代金の一部を受け取るケース等が該当します。

包括受遺者については、財産が指定されていないので、受遺者は遺産分割協議に参加する必要があります。協議の中でどの財産を分割するか決定します。

【受遺者と相続人は何が違うのか】

遺産を受け取るという部分は同じものの、受遺者と相続人は異なる点があります。

(1)代襲相続の有無

相続人であれば、被相続人よりも先に亡くなっていた場合、相続の権利はその子供や孫に移ります。これを代襲相続といいます。

代襲相続が起きれば、代襲相続人の財産取得分は、代襲される被代襲相続人と同じです。代襲相続は、「推定相続人の死亡」だけでなく、「相続欠格や相続廃除」で相続権を失った場合にも認められます。

しかし、受遺者の場合、被相続人より先に亡くなっても代襲相続は発生しません

(2)取り分への影響

相続において相続人が複数いる場合、例えば相続人が子供2人の場合、片方が相続放棄をすると、もう一人の子供の遺産は増えることになります。つまり、相続放棄された遺産は、ほかの相続人で分けるのです。
対して受遺者は、遺⾔通りの遺産しかもらえません。相続人の誰かが相続放棄しても、それによって受け取る遺産が増えたりはしないのです。

なお、受遺者が遺産を放棄すると、放棄した分はやはり相続人だけで分けることになります。

【相続税が高くなる】

遺贈による財産の受け取りは、相続税の対象となります。そのため、相続財産の総額が基礎控除よりも大きくなる場合、受けとった遺産について相続税を負担しなければなりません。

なお、受遺者が払う税金は通常よりも多くなります。これは、配偶者や一親等の血族、代襲相続人以外の方が相続財産を得た場合、相続税が2割増となる取り決めがあるからです。

従って、ケースによっては受遺者が高額の相続税を負う可能性もあります。

【相続の相談は古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへ】

受遺者について解説しました。受遺者と相続人は似ているようで異なる点も多いです。

遺産を受け取るため、場合によっては相続税の申告と納付が必要です。ご自身での申告が難しい場合は、税理士に相談してください。

相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。

60余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。

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投稿者: 古川顕史(公認会計士・税理士)

八王子相続サポートセンター センター長。 公認会計士・税理士。 早稲田大学商学部卒業 あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。 八王子相続サポートセンター所長 相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数。