こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
遺言を作成する場合、民法が定める普通方式遺言の中から自分に合ったものを選択します。普通式遺言には全部で三つありますが、その中の一つが「秘密証書遺言」です。
秘密証書遺言は、その名の通り「公証人・証人を含めて誰にも中身を知られない」遺言です。公証役場で作成するため、公証人・証人は遺言の存在を知りますが、中身までは見ません。
自身の死後まで、遺言内容を誰にも明かしたくない人にとっては、メリットのある遺言と言えます。その他にも、秘密証書遺言は全文PCでの作成や代筆も認められています。
しかし、公証人が中身を確認しないので、形式不備として無効になるリスクが高く、加えて原本もご自身で保管しなければならないので、紛失する可能性もあります。
はっきり言ってしまえば、作成の手間を考慮するとお勧めできません。世間的にも自筆証書遺言・公正証書遺言等、他の普通方式遺言と比較して、圧倒的に作成件数も少ないのです。
目次
【秘密証書遺言とは】
秘密証書遺言の特徴をまとめたのが下記です。
- ・代筆OK(ただし、署名は自分書くこと)
- ・パソコンでの作成もOK(署名は自筆でする)
- ・手続きは公証役場で行う
- ・その際に証人2人を用意する
- ・遺言内容は公証人や証人も見ない
- ・遺言書の原本保管は遺言者自身がする
- ・遺言の存在は公証役場で証明してもらえる
秘密証書遺言は公正証書遺言と同様で、公証役場での手続きが必要です。手続きには手数料として11,000円かかります。また、証人を用意できず、役場で紹介してもらう場合は一人あたり5,000円から1万円程度の費用が追加でかかります。
そして、秘密証書遺言書は作成記録だけ役場に残ります。原本管理は遺言者がしなければなりません。
【作成の手続き】
(1)遺言書の作成
遺言書は手書きの他、パソコンで作っても大丈夫です。別の方が代理で作成しても構いません。
ただし、署名だけは自筆で行います。
署名と押印をした後は遺言書を封筒等に入れ証書と同じ印章で封印します。異なる印章で押印すると、効力が無効になるので注意しましょう。
(2)証人を用意する
秘密証書遺言では、公証役場での手続きの際に2人の証人を用意する必要があります。証人は誰でもなれるわけではなく、以下に該当する方はNGです。
- ・未成年者
- ・推定相続人
- ・受遺者、それらの配偶者や直系血族
- ・秘密証書遺言の作成を担う公証人の配偶者と4親等内の親族
- ・公証役場の関係者(書記および使用人)
注意したいのは、相続における関係者(相続人や受遺者等)は証人になれない点です。
遺言執行者は相続人や受遺者でもなれますが、証人は認められていないことを覚えておきましょう。(証人は相続における利害関係の無い第三者でなくてはならないため。)
もし、証人が見つからない場合、公証役場で紹介してもらうか、税理士などの相続の専門家に依頼しましょう。ただし、この場合は費用が発生します。
(3)公証役場へ
証人が用意できれば、公証役場へ行きます。公証役場は全国どこの公証役場でも構いませんが、自宅近くの公証役場を選んだ方が良いでしょう。
公証役場は日本公証人連合会のホームページで調べられます。
役場にて公証人と2人の証人の前で遺言書を提示後、自分の遺言書である旨と住所・氏名を申述します。その後、公証人が遺言書を提出した日付と遺言者の申述を封紙に記載します。
最後に公証人、遺言者、証人がそれぞれ封紙に署名・押印をして、秘密証書遺言は完成です。
(4)保管は自分で行う
作成した秘密証書遺言は役場で保管してもらえません。
相続まで紛失しないように、ご自身で金庫等に保管しましょう。紛失すれば、その遺言は相続で活用されません。
【秘密証書遺言が推奨できない理由】
(1)不備が起こりやすい
秘密証書遺言は形式不備の可能性が高い部分が厄介です。
これは、遺言者以外だれも中身を見られないからです。公証人ですら確認しません。
よって、形式不備にならないためには、遺言者が注意する以外にありません。同じ公証役場で手続きをする公正証書遺言であれば、形式不備は起こらないので、この点は大きなデメリットです。
内容等を事前に専門家に確認してもらう方法もありますが、それであれば、秘密証書遺言を選ぶ必要はないでしょう。最初から公正証書遺言等を選択するべきです。
(2)原本が発見されない場合も
原本は遺言者が相続まで保管するので紛失のリスクはもちろん、相続時に家族に発見してもらえない怖れもあります。
同じ公証役場で作成する公正証書遺言では原本が公証役場に保管されるので、紛失等の心配はありません。自筆証書遺言でも法務局の保管制度を利用すれば、同様にリスクはありません。
(3)相続では検認手続きが必要
秘密証書遺言は、ルール通りに遺言書が書かれているか、家庭裁判所で確認される必要があります。(検認の手続き)
なお、検認が終わるまでは遺言書を開封できないので注意しましょう。もし、誤って開封してしまった場合は罰則として過料が課せられる可能性もあります。
【遺言の存在は検索できるが、遺言原本は探さなければならない】
秘密証書遺言は、日本公証人連合会の「遺言検索システム」で存在だけは確認できます。
しかし、存在は確認できますが、原本が無ければ効力は発生しません。相続開始時に誰も保管場所を知らなければ、遺言書通りに財産分割が行えません。
遺言検索システムを利用する場合、検索利用者が相続人本人の場合は以下の書類が必要です。
- ・遺言者の死亡書類(除籍謄本など)
- ・利用者と遺言者の繋がりが確認できる戸籍謄本など
- ・利用者の顔写真付き本人確認資料+認印
(顔写真付きの本人確認資料が無い場合は、印鑑証明書+実印が必須)
代理人がシステムを利用する場合、以下の書類が必要です。
- ・遺言者の死亡書類(除籍謄本など)
- ・委任者(利用者)と遺言者の繋がりが確認できる戸籍謄本など
- ・委任状(実印で押印)
- ・委任者(利用者)の発行3ヶ月以内の印鑑証明書
- ・代理人の顔写真付き本人確認資料+認印
(顔写真付きの本人確認資料が無いなら、代理人の印鑑証明書+実印でOKです)
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ここまで読んだ方は、秘密証書遺言はリスクが多く、デメリットが多いことがわかったかと思います。もちろんメリットもありますが、あまりにもデメリット部分が目立つので、あえて選択することは無いでしょう。
遺言形式でどれを選ぶかは遺言者の自由ですが、メリット・デメリットをよく把握した上で、最適なものを選んでください。
不明な点は専門家に相談すると良いでしょう。
相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。
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