こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
個人間の贈与については、年間額の累計が110万円を超えると贈与税が発生します。例えば、200万円なら超過分の90万円に、300万円なら190万円にそれぞれ贈与税が課税されます。
ここで注意する点として、「贈与税がかかるのは財産の受け渡しだけではない」ということです。
実は、借金を何らかの理由で帳消しにする「債務の免除」も、贈与に等しい利益を得たとして税金が課せられるのです。
【債務免除とは】
債務免除とは、債権者が無償あるいは非常に低い対価で権利放棄をしたことによって債務者の債務が免除されることです。債務を誰かに肩代わりしてもらった場合も該当します。
債務免除が行われると債務はなくなりますが、本来弁済されるはずだった価額分の利益を得たことと同じになります。
つまり、債務免除は贈与行為と同じとみなされ、贈与税が課税されるのです。
【みなし贈与】
贈与行為は贈与者と受贈者の双方の合意があって成立するので、本来であれば合意のない一方的なものは贈与と認められません。
ただし、これは民法上の話であって、相続税法では少し解釈が変わります。
つまり、相続税法においてはどちらかの認識がない贈与でも、特定の場合には「みなし贈与」として贈与税を課税するのです。
このみなし贈与には債務免除で得た利益を含めて、以下のものが該当します。
- ・債務免除益
- ・著しく低い価額での資産の売買
- ・他人が保険料を負担した生命保険金の受取
【課税対象になる債務免除益とは】
- ・借金の肩代わり
- ・借金の棒引き
- ・相続税など本人に支払い義務がある税金の肩代わり
例えば、親が子供の借金を肩代わりしたり、貸し手側が借り手側に配慮して借金を棒引きする行為はみなし贈与行為になります。
借金だけでなく、支払い義務のある税金を肩代わりした場合も債務免除益を得たとして、贈与税が課税されるので注意しましょう。
なお、債務の肩代わりが一時的な立て替え払いである場合はみなし贈与とはなりません。ただし、その場合は後日の返済について当事者間で合意があったことを示す証書が必要です。(証書がないと、立証が難しくなるからです。)
【課税されない債務免除益とは】
債務者本人の弁済が困難な状態で
- ・債務が免除される
- ・債務者の扶養義務者が債務の全部もしくは一部を引き受ける
のいずれかのケースに該当する場合、みなし贈与として課税されません。
これは、債務者本人が極度の貧困や病気といった理由で債務免除がなされた場合に、課税を行うのは適切ではないという理由からです。
ただし、課税対象から外れる部分は、「明らかに弁済が困難だとされる部分」に限ります。
また、債権者が法人で債務免除をした場合も非課税です。そもそも、法人からの贈与で取得した財産の価額は贈与税の課税価額に算入しないと相続税法で決まっているからです。
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