相続財産に賃貸用アパートが… 家賃はいったい誰が貰うのか

 

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。

相続に関するお悩みはさまざまですが、特に相続財産の中に賃貸アパートやマンションが含まれている場合、家賃収入の取り扱いが複雑になることがあります。

借主からの家賃については、相続開始後に誰がその収入を受け取るのか、もらった家賃の分配方法はどうなるのか、多くの方が疑問を感じるポイントです。

本記事では、家賃収入に関する基本的な考え方や注意点について解説します。

【賃貸物件と家賃収入の基本的な取り扱い】

相続財産に含まれる不動産が賃貸物件である場合、その家賃収入は被相続人が生前に得ていた収入の延長線上にあります。

この収入の取り扱いは、相続開始のタイミングや遺産分割の進捗状況によって異なります。大きく以下の3つの状況に分けて考える必要があります。

(1)相続開始前の家賃収入

被相続人が亡くなる前に発生していた家賃収入は、その方自身の所得として扱われます。そのため、遺産として相続財産の一部となり、相続人全員で分配する対象となります

(2)相続開始後で遺産分割協議が成立する前の家賃収入

相続開始後、遺産分割が完了するまでの間に発生する家賃収入については、不動産の所有者がまだ確定していないため、これも相続財産の一部と見なされます。

この期間中の家賃収入は、法定相続分に基づき、相続人全員で分配する形になります

(3)遺産分割協議成立後の家賃収入

遺産分割協議が完了し、不動産の取得者が確定した場合、その時点から発生する家賃収入は取得者が受け取るものとなります。この段階では、家賃収入は取得者個人の収入として扱われます

【遺言の有無をまずは確認する】

家賃収入の分配については、遺言書の有無によっても大きく変わります。遺言書がある場合とない場合でそれぞれの処理方法を確認してみましょう。

(1)遺言書がある場合

遺言書があり、賃貸物件の相続人が指定されている場合は、相続開始後に発生する家賃収入は指定された相続人のものになります

なお、遺言書に不備がある場合は無効と判断されることがあるため、作成には注意が必要です。

特に、自筆証書遺言は法的効力を持つために必要な要件が多いため、専門家のサポートを受けたり、公正証書遺言を利用したりするのがおすすめです。

(2)遺言書がない場合

遺言書がない場合、賃貸物件の取得者を決定するには遺産分割協議が必要です。この協議が完了するまで、賃貸物件の家賃収入は相続人全員の共有財産と見なされ、法定相続分に基づいて分配されます

協議が成立しない限り、特定の相続人が家賃を独占することはできません。

不動産の相続人が受け取れるのは分割決定後に発生した家賃のみですが、協議での取り決めがある場合(他の相続人の同意が得られる場合)は、協議前のものであっても全て受け取れます。

【準確定申告の重要性】

被相続人が生前に得ていた家賃収入は、相続人が代理で「準確定申告」を行う必要があります。

これは、被相続人の死亡した年の所得を申告するもので、相続開始後4か月以内にしなければなりません。この期間は相続税申告よりも短いため、注意が必要です。

未収の家賃であっても、その発生日が相続開始前であれば被相続人の所得として申告対象となります。もし申告を怠ると、延滞税や無申告加算税が課される可能性があるため、しっかりと対応しましょう。

また、相続人が家賃収入を得る場合は、その分の所得税の確定申告をする必要があります。

不動産所得が20万円以下の場合は申告義務が免除されますが、還付を受けられる可能性があるため、申告の検討をしましょう。

【賃貸物件を取得した後の注意点】

賃貸物件を相続した後、売却を希望する方もいるかもしれません。しかし、借地借家法により、入居者の権利が保護されているため、正当な理由がない限り退去を求めることはできません

賃貸借契約時に定期借家契約をしていたのであれば、事前に定めた契約期間が過ぎれば解約できますが、一般的な賃貸契約なら、貸主側の都合で解約を実行するには以下のような正当事由が必要です。

  • ・建物を貸主自身が使用する必要がある場合
  • ・建物の老朽化や取り壊しが必要な場合

入居者に立ち退き料を支払う方法もありますが、いずれにせよ入居者との交渉は慎重に進める必要があります。

【相続登記の義務化と早期対応の重要性】

不動産を相続した場合、名義変更(相続登記)を行う必要があります。現在では義務化されています。現行の新制度は、過去の相続分にも適用されるため、早めに手続きを済ませておくことが重要です。

相続登記を怠ると、不動産の売却や管理に支障が出るだけでなく、他の相続人による処分のリスクも生じます。専門家に相談しながら確実に手続きを進めましょう。

【相続の相談は八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターまで】

相続不動産に賃貸アパートやマンションがある場合、その家賃収入は取得者が確定しているかどうかで受取人が変わります。

また、相続開始前の一定期間内に生じた家賃については準確定申告の対象となるため、手続きを忘れないようにしましょう。

相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。

60余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。

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投稿者: 古川顕史(公認会計士・税理士)

八王子相続サポートセンター センター長。 公認会計士・税理士。 早稲田大学商学部卒業 あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。 八王子相続サポートセンター所長 相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数。