こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
前回のコラムでは相続財産の中でも土地の評価方法について解説しました。
今回のコラムでは農地の評価方法について解説していきます。
【農地区分】
農地の評価方法を解説していく前に、農地の種類について少し補足をしておきたいと思います。
農地の評価をするにあたって、農林水産省が定める農地転用許可制度の農地区分と国税庁の定める農地区分について知る必要があります。
農林水産省の定める農地転用許可制度の農地区分では、農地を農地以外の目的で開発する事ができるか否か(「どのような場所に位置しているのか」「農地としての生産性がどのくらい高いのか」等の諸条件)によって区分されています。
≪農林水産省の定める農地転用許可制度の農地区分≫
区分 | 営農条件、市街地化の状況 |
農用地区域内農地※1 | 市町村が定める農業振興地域整備計画※2において農用地区域とされた区域内の農地 |
甲種農地 | 市街化調整区域内※3の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地 |
第1種農地 | 10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 |
第2種農地 | 鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 |
第3種農地 | 鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 |
※1農用地区域とは、その生産性の高さから各市町村により農地として利用すべきと指定された区域のこと。原則として農地以外の目的では利用できません。
※2農業振興地域整備計画とは、自然や経済的な利益のために農業をするべき場所(10ha以上の広い農地)や農業の基盤となるもの(土地や水等に関わる施設)を確保するために、政府が作成している計画のこと。
※3市街化調整区域とは、新しく建物を建てたり増築する等の都市開発行為が原則としてできない区域のこと。農業に関連する建物に関しては建築することができます。また例外として、公的施設等は建築できる場合があります。
引用:農林水産省HP「農地転用許可制度」
引用:農林水産省HP「農業振興地域制度の概要」」
国税庁の定める農地区分は、上記の区分をもとに4つに区分されています。
[純農地]
純農地とは下記のような農地のことを指します。ただし、後述の[④市街地農地]の範囲に該当するものは除きます。
(1)農用地区域内にある農地
(2)市街化調整区域内にある農地のうち、第1種農地又は甲種農地に該当するもの
(3)上記(1)及び(2)に該当する農地以外の農地のうち、第1種農地に該当するもの。ただし、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地又は第3種農地に準ずる農地と認められるものを除く。
[中間農地]
中間農地とは下記のような農地のことを指します。ただし、後述の[④市街地農地]の範囲に該当するものは除きます。
(1)第2種農地に該当するもの
(2)上記(1)に該当する農地以外の農地のうち、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地に準ずる農地と認められるもの
[市街地周辺農地]
市街地周辺農地とは下記のような農地のことを指します。ただし、後述の[④市街地農地]の範囲に該当するものは除きます。
(1)第3種農地に該当するもの
(2)上記(1)に該当する農地以外の農地のうち、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第3種農地に準ずる農地と認められるもの
[市街地農地]
市街地農地とは下記のような農地のことを指します。
(1)農地法第4条≪農地の転用の制限≫又は第5条≪農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限≫に規定する許可(以下「転用許可」という。)を受けた農地
(2)市街化区域内にある農地
(3)農地法等の一部を改正する法律附則第2条第5項の規定によりなお従前の例によるものとされる改正前の農地法第7条第1項第4号の規定により、転用許可を要しない農地として、都道府県知事の指定を受けたもの
【農地の評価方法】
農地の評価方法は農地区分によって異なります。
≪国税庁による農地の分類と評価方法≫
区分 | 評価方法 |
①純農地 | 倍率方式 |
②中間農地 | 倍率方式 |
③市街地周辺農地 | ④として計算した価額の80% |
④市街地農地 | 宅地比準方式または倍率方式 |
引用:国税庁HP「財産評価第3節・農地及び農地の上に存する権利」
倍率方式
相続財産の評価方法②土地の評価方法でも登場した倍率方式を用います。
倍率方式とは、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて土地の価額を計算する方法です。
固定資産税評価額は固定資産税の課税明細書で、評価倍率は国税庁が定める評価倍率表で確認することができます。
固定資産税評価額×評価倍率 |
宅地比準方式
宅地比準方式とは、農地を宅地であると仮定して価額を計算し、そこから実際に農地から宅地に転用する時にかかる造成費を控除して計算します。
(宅地と仮定した場合の1㎡当たりの価額)-(転用すると仮定した場合にかかる1㎡当たりの造成費)×地積(土地の面積) |
※造成費の詳細は国税庁HPから確認することができます。
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