【年内の対策が鍵】生前贈与「持ち戻し7年」新ルールと注意点

本記事の概要
年末に検討される「生前贈与」ですが、税制改正で亡くなる直前の贈与が相続財産に加算される「持ち戻し期間」が3年から7年へ延長されました。八王子・多摩エリアで生前贈与を検討中の方へ、新ルールの影響と年内に確実な対策を行うための注意点を税理士が解説します。
こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
10月に入り、朝晩は少し肌寒く感じる季節になりました。年末が近づくと「今年の非課税枠(110万円)を使って、子どもや孫に少しずつ財産を移しておこう」と準備を始める方が多くいらっしゃいます。生前贈与は将来の相続税を減らす有効な手段です。
結論から申し上げますと、税制改正で生前贈与のルールが大きく変わり、対策を急ぐ必要が出てきました。「とりあえず年末に振り込めば大丈夫だろう」と安易に考えていると、後から税務署に否認され、多額のペナルティを受けるケースは珍しくありません。今回は新しくなった生前贈与のルールと、失敗しないための具体的な注意点について詳しく解説いたします。
【ルールの変更「持ち戻し期間7年」とは】
亡くなる直前の贈与は相続財産に加算される
年間110万円まで贈与税がかからない「暦年贈与」を利用して、毎年コツコツと財産を子世代へ移すのが相続税対策の王道でした。
日本の税法には「生前贈与加算(持ち戻し)」という厳格なルールが存在します。
亡くなる直前に行われた駆け込みの生前贈与は、非課税枠の範囲内であっても「なかったこと」にされ、相続財産に足し戻して相続税を計算する仕組みです。
■参照:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁
加算期間が3年から7年へ延長された影響
これまで持ち戻しの対象期間は「亡くなる前3年間」でした。税制改正により2024年1月以降の贈与から、この期間が「7年間」へと段階的に延長されています。
せっかく良かれと思って生前贈与を続けても、贈与をしてから7年以内に万が一のことがあれば、その間に贈与した財産はすべて相続財産に組み込まれ、相続税の対象になってしまいます(延長された4年分は総額100万円まで加算しない緩和措置はあります)。
八王子や多摩地域にお住まいの地主の方など、まとまった財産をお持ちのご家庭にとっては、節税効果を得るハードルが以前よりも高くなりました。だからこそ、一日でも早く元気なうちから計画的に贈与をスタートさせることが重要です。
【年内に生前贈与を行う際の3つの注意点】
ご自身の意思で財産を移したことを税務署にしっかり認めてもらうため、年内の贈与を実行する前に以下の3点を確認してください。
(1)贈与契約書を都度必ず作成する
親族間のお金のやり取りであっても、口約束だけでは証拠に残りません。「あげた」「もらった」という双方の合意があったことを証明するため、毎回必ず「贈与契約書」を作成してください。
金額や日付、誰から誰へ渡したのかを明記し、お互いの署名と押印を残すことが税務調査対策の基本となります。
(2)「名義預金」と疑われないための通帳・印鑑管理
税務調査で最も指摘されやすいのが名義預金です。口座の名義はお子様やお孫さんであっても、通帳や印鑑をご自身(贈与する側)が管理し、もらった側が自由にお金を引き出せない状態であれば、実質的に「あなたの財産」とみなされます。
贈与したお金は必ずもらった本人が管理している口座へ振り込み、本人が自由に使える状態にしておく必要があります。
(3)基礎控除(110万円)以下でも記録を残す重要性
「110万円以下なら申告しなくていいから契約書もいらない」と考えるのは危険です。申告の義務がないからこそ、客観的な証拠を残しておかなければ、後から税務署に「これは贈与ではなく、単にお金を預けていただけではないか」と疑われる原因になります。
銀行振り込みを利用して履歴を残すとともに、少額であっても契約書を交わす習慣をつけてください。
【八王子・多摩エリアで検討したい「相続時精算課税制度」の併用】
新設された「年110万円の基礎控除」のメリット
暦年贈与の持ち戻し期間が7年に延長された一方で、「相続時精算課税制度」には嬉しい改正がありました。新たに「年110万円の基礎控除」が設けられたのです。
この制度を選択して年間110万円以内の贈与を行えば贈与税の申告も不要となり、万が一贈与者がすぐに亡くなってしまっても、暦年贈与のような「持ち戻し」の対象になりません。高齢になってから贈与を始める方にとっては非常に使い勝手の良い制度に生まれ変わりました。
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暦年贈与とどちらを選ぶべきか?判断のポイント
従来の「暦年贈与」を続けるべきか、新しくなった「相続時精算課税制度」を利用するべきかは、ご家庭の資産規模やご年齢、誰に財産を渡したいかによって全く異なります。一度「相続時精算課税制度」を選択すると、その人からの贈与については二度と「暦年贈与」に戻すことができないため、慎重な判断が求められます。
とくに八王子や多摩エリアで実家などの不動産をお持ちの方は、将来の相続税額も踏まえた綿密なシミュレーションが不可欠です。
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【まとめ】
生前贈与はルールを正しく理解し、客観的な証拠を残しながら進めれば、円満な相続を実現するための強力な武器になります。自己判断で間違った手順を踏んでしまうと、数年後の相続発生時に多額の税金を請求されるトラブルになりかねません。
判断に迷う場合は、無理にご自身だけで進めようとせず、速やかに相続の専門家に相談することを強くお勧めします。
相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。70余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。
【よくあるご質問(Q&A)】
Q1: 今年から7年以内の贈与がすべて持ち戻されるのでしょうか?
A1: いきなり7年になるわけではありません。2024年1月以降の贈与から少しずつ加算期間が延長され、最終的に7年間の持ち戻しになるのは2031年以降の相続からです。
Q2: 孫への贈与も7年ルールの対象になりますか?
A2: 原則として、お孫さんは法定相続人ではないため、生前贈与加算(持ち戻し)の対象にはなりません。ただし、お孫さんを養子にしている場合や、遺言書等で財産を遺す指定をしている場合は加算の対象になるため注意が必要です。
Q3: 贈与契約書は自分で作成しても法的に有効ですか?
A3: はい、ご自身で作成したものでも、必要な項目(日付、金額、双方の氏名・住所、押印など)が正しく記載されていれば有効です。書き方に不安がある場合は、専門家にご確認いただくことをお勧めします。
Q4:暦年贈与と相続時精算課税制度、どちらを選ぶべきですか?
A4:ご年齢や資産規模によって異なります。高齢になってから贈与を始める場合は持ち戻しリスクのない相続時精算課税が有利になるケースが多い一方、一度選択すると暦年贈与には戻せないため、専門家への相談と試算をお勧めします。
Q5:過去に贈与契約書なしで振り込みをしていた場合、どうすればよいですか?
A5:過去分を遡って作成することはできませんが、今後の贈与から正しく整備することが重要です。振込履歴は証拠として残っているため、今後は贈与契約書の作成と合わせて継続的に記録を残してください。

八王子相続サポートセンター所長。早稲田大学商学部卒業。あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。
相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数
「法律顧問」も加えて「相続問題」をワンストップで解消するべく、「八王子相続サポートセンター」を開設いたしました。
八王子・多摩地域における長年の実績をふまえ変化する税制をフォローし、事前・事後の対策如何にかかわらず
「円満な相続」「否認されない相続税申告」を目指し、邁進してまいります。