こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている 税理士 の古川顕史です。
相続税 を減らしたい場合、対策の一つとして挙げられるのが生前贈与です。生前贈与とは、生きている間に財産を特定の誰かに渡すことです。
生前のうちに親子間や夫婦間で財産や権利の一部を移しておけば、相続時の課税対象財産が少なくなるため、節税になるのです。
ただし、生前贈与でも一定金額を超えると、贈与税が発生します。贈与税を支払うことになると、相続税は減らせてもトータルの税負担は変わりません。
では、その贈与税の支払いをなくすにはどうすれば良いのか。本記事で解説いたします。
目次
【贈与税について】
贈与税にも相続税と同じく基礎控除が設定されています。贈与された財産の合計が年間で基礎控除額を超える場合に贈与税が発生します。
基礎控除は受贈者一人につき年間110万円までです。つまり、110万円以下であれば贈与税は生じません。
基礎控除額を超える場合は、以下の計算式で税額を算出します。
贈与税率や控除額は、条件によって異なります。
もし以下の条件を満たす場合、特例税率が適用となります。
- ・贈与者と受贈者が両親と子供や祖父母と孫といった直系尊属・卑属の関係である
- ・贈与があった年の1月1日時点で受贈者が20歳以上
なお、勘違いしやすいですが、基礎控除は受贈者一人についての金額です。
例えば、父親、母親、祖父、祖母からそれぞれ110万円ずつ贈与された場合、受贈者がもらった金額の合計が440万円になるため、贈与税が発生します。
贈与者一人からもらった金額が110万円ずつだからといって、全てが基礎控除対象ではないのです。
【贈与税を0円にする方法とは】
(1)生前贈与の金額を基礎控除内に抑える
前述したように、贈与合計額が110万円以下なら無税です。贈与税を支払わない方法としては生前贈与を基礎控除内に抑えること、これが最もベターです。
110万円は少なく感じる方もいるかもしれませんが、毎年110万円ずつ贈与すれば、10年間で1100万円を無税で渡せます。
しかし、相続が始まる直前の贈与については、相続税の課税対象となるので注意です。これは「生前贈与加算」と言います。以前ではこの生前贈与加算の期間は相続開始前の3年間でしたが、2023年度の税制改正で、7年に延長されました。
適用は2024年1月1日以降の贈与からで、相続開始年に合わせて、段階的に加算年数が延びていきます。詳しくは以前の記事を一読ください。
もう一つの注意点として、生前贈与の課税方式を「相続時精算課税」にしないこと。
相続時精算課税は贈与者が60歳以上の父母もしくは祖父母、受贈者が18歳以上の子供や孫の場合、贈与税が合計2,500万円分まで非課税となる課税方式です。2,500万円を超えた場合にかかる贈与税は一律で20%となります。
非課税枠が高くてお得に見えますが、この課税方式を適用して贈与された財産は、贈与者死亡時に相続税の課税対象になります。(評価方法も贈与時の価格でされます。)
つまり、結局は相続税課税対象になるので、節税効果はあまり見込めません。
なお、この方式は受贈者が選択することになっていて、利用したい場合は贈与税申告書と相続時精算課税選択届書を税務署に提出しなければなりません。
(2)特例制度を利用して非課税枠内におさめる
生前贈与では条件を満たすことで利用できる特例もあります。
例えば以下のようなものがあります。
- ・おしどり贈与…婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産(または購入資金)を贈与した場合に2,000万円まで非課税
- ・教育資金の一括贈与…教育用の資金として最大1,500万円が非課税
これらの制度を利用するには、贈与額が非課税枠内であっても税務署への届け出が必須です。また、利用用途も限定されるので注意しましょう。
活用する場合には、利用条件が適合しているか、節税効果がどれぐらいあるのか等を専門の税理士に相談した方が良いでしょう。
【扶養義務者からの都度必要な贈与は無税】
扶養義務者からされる贈与について、生活費や教育費に充てる目的で必要範囲であるなら、贈与額が110万円を超えても贈与税課税対象外です。
例えば、「祖父母や父母から大学の入学料をもらう」といったケースでは、贈与税はかからないのです。これは国税庁のHPにも記載されています。
扶養義務者は受贈者の配偶者や両親、祖父母、曽祖父母の他、兄弟姉妹の他、三親等内の親族で生計を一にする人です。
大事なポイントとして、贈与は「必要な分を必要なタイミング」ですること。要するに「都度の贈与」でなければなりません。
都度贈与で無税となる資金は生活費と教育費です。どちらも具体的な用途が細かく決められています。
- 生活費例
- ・仕送り(賃料や食費などの生活費)
- ・結婚費用(式場代や料理代、撮影費用等、結婚式を開くための費用)
- ・出産費用(病院での検査代や入院費など、出産にかかる費用)
- ・新婚生活の費用(家具購入費や引越代等)
- 教育費例
- ・入学費用
- ・授業料
- ・教科書等の教材費
- ・定期券購入代などの通学費
- ・修学旅行などの行事参加費
- ・塾の月謝
- ・受験費用
繰り返しますが、生活費でも教育費でも、無税にするには必要な時に必要範囲内の金額であることが条件です。
例えば、祖父が幼稚園に入園した孫に対して大学までの教育費をまとめて渡すのは贈与税の課税対象です。また、過剰な仕送りも課税対象となります。
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