こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
改正相続法のポイントとして、今回も前回に引き続き、“争族から第三者を守る法改正”に焦点を当てて、具体的な施策の内容をご紹介してまいります。
【相続の効力を変更するその他の法改正】
このたびの相続法改正では、相続そのもののあり方を変える重要な改正として相続の効力に関する改正点があります。
前回では、相続させる旨の遺言によって承継された相続財産のうち、法定相続分を超えて相続された部分における対抗関係について解説いたしました。
今回は、遺言執行者が置かれている場合で、遺言執行を妨げる相続人が行った行為の無効に関する取扱いについて説明いたします。
例えば、被相続人である父親が亡くなり、配偶者、子である長男、長女の三人の法定相続人がおり、さらに遺言執行者として弁護士が指名されている場合で、被相続人の遺言によって、相続財産のうちの建物Aが配偶者と長男に与えるとされたことについて、それに反対する長女が、この建物を勝手に不動産業者に売却し、さらに不動産業者からお客様にこの建物が売却されてしまったとします。
そして、不動産業者もお客様も善意の第三者(長女が遺言を無視して勝手に建物を売却していることを知らない、ということ)であるとします。
この場合、売却された建物の帰属はどうなるのでしょうか?実は、このようなケースにおける権利の帰属は、現行の相続法と、改正相続法とでは対応方法が変わってきますので要注意です。
【遺言執行を妨げる相続人の行為が無効ではなくなる!】
さきほどの事例では、現行の相続法においては、長女が勝手に行った相続財産の建物の売却という行為は無効とされ、この建物の権利については、遺言の定めのとおり、配偶者と長男になります。
その根拠は、改正前の相続法では、遺言執行者が置かれている場合に、遺言執行を妨げる相続人が行った行為は無効とされているからです。つまり、善意の第三者である不動産業者もお客様も、この建物を手にすることができなくなるのです。
しかしながら、改正相続法においては、この点の定めが変更となり、遺言執行者が置かれている場合で、遺言執行を妨げる相続人が行った行為については、善意の第三者に対して無効を主張することができなくなりました。つまり、先ほどの事例で、長女が勝手に行った相続財産の建物の売却という行為が無効ではなく、有効とされてしまうということになるのです。
このたびの相続法の改正では、遺言の有無やその内容を知らない債権者や債務者の利益や、第三者の取引の安全性を確保し、現行の登記制度などの信頼性を守るための施策が反映されたことにより、争族に巻き込まれた第三者を保護することを目指していることがお分かりいただけたものと思います。
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