こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
2017年版中小企業白書(以下「白書」といいます。)によると、2016年一年間の中小企業の休廃業・解散件数は29,583件と過去最大になりました。
その主たる要因は、経営者の高齢化と後継者の不足と言われています。
こうした状況の打開に向け、「経営承継円滑化法」が改正施行され、親子間で事業を承継する「親子承継」を行う際に税制面の支援が受けられるようになっています。
こちらでは、親子承継における贈与に関する税制度を解説いたします。
【中小企業の事業承継が求められる背景】
白書によると、経営者の高齢化による経営者交代率は長期にわたり下落傾向で、昭和50年代に平均5%であった経営者交代率は、2011 年には 2.46%まで落ち込んでいます。
また、全国の経営者の平均年齢は59歳9ヵ月と過去高水準に到達し、60歳を超えるのも時間の問題とされています。
さらに、後継者が決まっている中小企業の割合は全体の41.6%で、残りの約60%は後継者が未定で、そのためさらに廃業が増えるものと懸念されています。
こうした状況を解決には、ステークホルダーが受け入れやすく、円滑に事業承継が進むことが期待できる「親子承継」の促進が期待されているのです。
【親子承継における現行の贈与税】
例えば、後継ぎとなる子が、現在の経営者である親から、会社の株式を生前贈与する場合、贈与税が課税されます。
贈与税については、「暦年課税贈与制度」と「相続時精算課税制度」の二つの課税制度があります。
暦年課税贈与制度を活用すると、年間110万円の基礎控除を受けることができます。
税率は10%~55%の累進課税のため、株式の評価額が高い場合は贈与税も高額となり、後継ぎとなる子にとっては多くの株式を贈与されると税負担に悩むことになります。
生前贈与の場合、通常は暦年課税贈与制度を採用するのですが、受贈者が選択すれば「相続時精算課税制度」の適用を受けることができます。
この制度は、贈与の年の1月1日現在で贈与者が60歳以上の父母または祖父母で、受贈者が20歳以上の贈与者の推定相続人である子または孫に該当する場合に適用できます。
この制度では、贈与税は特別控除により累積2500万円までは課税されず、2500万円を超えた場合に、超過分について一律20%の贈与税が課税されます。
また、贈与財産の価額は、贈与者に相続が発生した時に相続財産の価額に合算され、相続税において精算されます。
このため、相続財産に含まれる株式や土地の評価額は、合算時点で決まることから、相続税もこれに連動して上下します。
なお、一度、この相続時精算課税制度を選択すると、その後同じ贈与者からの贈与は、この制度が強制適用されます。
このように、現行の贈与課税制度のいずれを選ぶかは、贈与のタイミングや贈与の対象となる財産の内容・規模・価額ににしつがって判断する必要がありますので、早めに税理士に相談することをおススメします。
なお、現行の贈与課税制度については、いずれも贈与される財産の価額が高額であると税負担も大きくなるので、これが親子承継を阻む要因と言われています。
こうした現行の贈与課税制度の税負担を緩和するために導入されたのが、経営承継円滑化法によって創設された事業承継税制となります。
こちらについては、後編でご紹介いたします。
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