「未支給年金」は誰が貰える? 相続税はかかるのか

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
『年金は亡くなったら終わり』だと思って、年金証書をそのまま引き出しに眠らせてはいませんか?
相続の相談を受けていると、預貯金や不動産のことは詳しく調べていても、この「未支給年金」の手続きを失念されている方がたくさんいます。
実はこのお金、相続税がかからない「ご遺族だけの特別な権利」なのです。今回は、知らないと損をする年金の手続きについて解説します。
【なぜ「未支給」の年金が発生するのか?】
未支給年金とは、「亡くなった方が本来もらえるはずだったのに、未だ受け取っていない年金」のことです。
なぜ、亡くなった後に年金が発生するのでしょうか。その理由は、日本の年金制度特有の「後払いシステム」にあります。
公的年金(国民年金・厚生年金)は、当月分をその月に受け取るわけではありません。原則として、「偶数月の15日」に「前月と前々月の2ヶ月分」が振り込まれる仕組みになっています。
例えば、2月15日振込は前年の12月分、今年の1月分、4月15日振込は2月分+3月分、6月15日振込は4月分+5月分といったように、常に1〜2ヶ月分遅れて支払われているのです。
【「亡くなった月の分」まで権利がある】
重要な点として、年金は「亡くなった日の属する月」まで受け取れるというルールがあります。
例えば、5月20日に亡くなった方がいたとしましょう。この方は5月分までの年金を受け取る権利がありますが、5月分の年金が実際に支払われるのは、次の支払日である「6月15日」です。しかし、6月15日が来る前にご本人が亡くなってしまうため、本人の口座で受け取ることができなくなります。
この「受け取る権利はあるのに、支払日前に亡くなったために宙に浮いたお金」こそが、未支給年金なのです。
【未支給年金を受け取れる人とは】
故人の未支給年金は、誰でも受け取れるわけではありません。受け取るためには、亡くなった方と「生計を同一としていた家族」という条件が必要になります。
生計を同一としていたとは、簡単に言えば「財布を一つにして生活していた」あるいは「経済的な助け合いがあった」状態を指します。
具体的には以下のようなケースです。
同居していた場合:基本的に住民票が一緒であれば認められます。
別居していた場合:住民票が別でも、定期的に仕送りをしていたり、健康保険の扶養に入っていたりしていた実態があれば、証明書類(振込履歴や公共料金の支払い証明など)を添えて申請することが可能です。
【受け取れる人の優先順位】
未支給年金を受け取れる親族には、「順番」があります。
順番は以下の通りです。(上に書かれている関係ほど優先されます。)
- 配偶者(婚姻届を出していない事実婚も含まれます)
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他の3親等内の親族(叔父・叔母、甥・姪など)
この順位は絶対です。例えば、亡くなった方に「妻」と「長男」がいる場合、受け取る権利があるのは「妻」だけです。妻が存命なのに、長男が自分名義で請求することはできません。
【相続税はかかる?税金の注意点】
最も多くの方が誤解されているポイントです。未支給年金は亡くなった人の権利を引き継ぐのだから、相続税の対象になるのでは?と心配されますが、実は相続税がかからないのです。
未支給年金は「遺族の生活を支えるための、遺族自身の固有の財産」とされています。そのため、相続税の対象となる「故人の遺産」には含まれません。
故人の遺産に含まれない以上、相続税はかかりません。どんなに高額な未支給年金であっても、相続税の計算に含める必要はありません。
そして、遺産分割協議が不要です。他の財産のように「誰がもらうか」を話し合ったり、遺産分割協議書に書いたりする必要がありません。前述の「優先順位1位の人」が、自分自身の権利として堂々と受け取れます。
たとえ遺言書に「全財産を愛人に譲る」と書かれていても、未支給年金だけは法的な優先順位に従ってご遺族に支払われます。
【「所得税」の対象になる】
相続税はかかりませんが、受け取ったご遺族の「所得(収入)」として扱われます。ですが、実際にはほとんどのケースで所得税は発生しません。
なぜなら、一時所得には年間50万円の特別控除があるからです。
未支給年金が一度に50万円を超えることは稀です。他にも生命保険の満期保険金など「一時所得」に該当する収入が他になければ、確定申告をする必要がありません。
【未支給年金の請求手続き】
ステップ①:年金を止める(受給権者死亡届)
まずは、亡くなったことを年金事務所に知らせ、振込をストップさせます。
※日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合、この「死亡届」自体の提出を省略できるケースが増えています。
期限:厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内
注意:受給権者死亡届を怠って振り込まれ続けたお金を使い込んでしまうと、後に「不正受給」として国から返還を求められるトラブルに発展します。
ステップ②:未支給年金を請求する
年金をストップする手続きと同時に(またはその後に)、「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出します。
その際には以下の書類が必要になります。
- 亡くなった方の年金証書
- 亡くなった方と請求者の関係がわかる戸籍謄本
- 生計を同一にしていたことを証明する住民票(世帯全員分)
- 受け取りたい口座の通帳(請求者本人のもの)
【相続に関する不安は八王子相続サポートセンターへ】
未支給年金は、金額としては数万〜数十万円程度かもしれません。しかし、大切なご家族が残してくれた最後の大事な資産です。
「誰が貰えるのか」「故人と別居していたけど認められる?」といった疑問があれば、ぜひお気軽に当事務所へご相談ください。
相続税の申告だけでなく、相続全般のお悩みをトータルサポートいたします。
相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。
60余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。

八王子相続サポートセンター所長。早稲田大学商学部卒業。あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。
相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数
「法律顧問」も加えて「相続問題」をワンストップで解消するべく、「八王子相続サポートセンター」を開設いたしました。
八王子・多摩地域における長年の実績をふまえ変化する税制をフォローし、事前・事後の対策如何にかかわらず
「円満な相続」「否認されない相続税申告」を目指し、邁進してまいります。