遺言書で「できること」とは【遺産相続の分配以外に指定できる事項】

投稿日時
遺言書

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。

遺言書は相続において故人の意思を反映するための重要な書類です。

内容については『〇〇に遺産を渡す』等、「遺産分配に関するもの」を連想しがちですが、実は戸籍上親子関係ではない子供の認知など、いくつかの事項に対しての指定が可能です

本コラムでは遺言書に指定できる事項について詳しく説明いたします。是非、遺言書の作成に役立ててください。


【遺言書が持つ法的効力】

遺言書に書いたからといって、どんなことでも法的に認められるわけではありません。法的な効力を持つ内容は、大きく以下の3つのカテゴリに分けられます。

  • 身分に関すること(子供の認知や、未成年者の保護者を決めるなど)
  • 財産の処分に関すること(相続人以外への財産の受け渡しや、寄付など)
  • 相続のルールに関すること(財産の分け方の割合や方法の指定、相続人の権利を取り上げるなど)

この3つのカテゴリからさらに詳しく分けた「遺言書でできる8つのこと」を順番に見ていきましょう。


【遺言書で「できること」8つのポイント】

(1)誰にどのくらい財産を渡すか決める(相続分の指定)

財産を、どの相続人にどれくらいの割合で渡すか、自由に決めることができます。

民法では、配偶者は半分、子どもは半分といったように「法定相続分」という目安が定められています。

しかし、遺言書があれば「長男には多めに財産を残したい」「家業を継ぐ子どもに多めに配分したい」といったご自身の希望を優先させることが可能です。


(2)財産の分け方を指定する(遺産分割方法の指定・禁止)

「どれくらいの割合か」だけでなく、「どうやって分けるか」も指定できます。分け方には主に3つの方法があります。

  • 現物分割:財産をそのままの形で分ける方法です。「今の家は妻に、銀行の預金は長女に」といった具合です。
  • 代償分割:誰か一人が不動産などの大きな財産をもらう代わりに、他の相続人に対して代償金を払ってあげる方法です。「長男が実家をもらう代わりに、次男には500万円を渡す」という形です。もらう側に現金がないと実現できない点に注意が必要です。
  • 換価分割:不動産などを一度すべて売却して現金に変え、そのお金をみんなで分ける方法です。一番公平に分けられますが、売却の手間や手数料がかかってしまいます。

遺言書では、これらの方法を具体的に指定したり、信頼できる人に分け方を一任できます。また、遺産分割自体を禁止することも可能です。


(3)相続人以外の人に財産を譲る(遺贈)

法律上の相続人以外の人に財産を渡すことを「遺贈」と呼びます。

例えば、「老後の介護を献身的に手伝ってくれた長男のお嫁さんに財産を渡したい」「長年連れ添った内縁のパートナーに財産を残したい」「お世話になった団体に寄付したい」といった希望は、遺言書に記すことで実現できます。


(4)婚姻関係にない子どもを認知する

戸籍上の婚姻関係がないお相手との間に生まれた子どもがいる場合、遺言書の中で「自分の子どもである」と認知することができます。

認知されると、そのお子さんは法律上の相続人となり、遺産を受け取る権利を持つことになります。なお、この場合は遺言執行者が就任してから10日以内に、役所へ認知の届け出を行う義務が生じます。


(5)問題のある相続人から権利を奪う(相続人の廃除)

もし、将来財産を受け取る予定の相続人から、日常的にひどい虐待を受けていたり、耐え難い侮辱を受けたりしている場合、遺言書で「この人には財産を渡したくない」と指定して、相続人の資格を奪うことができます。これを「相続廃除」と言います。

ただし、ご自身が亡くなった後、遺言を執行する人が家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所に認められて初めて確定します。


(6)未成年の子どものために代理人を決める(後見人の指定)

相続人の中に未成年の方がいる場合、その方自身は単独で遺産分割の話し合いなどの法律行為ができません。

そのため、遺言書によって代理人(未成年後見人)や、その後見人をチェックする人(未成年後見監督人)をあらかじめ指定し、手続きを任せます。


(7)遺言内容を実行する人を決める(遺言執行者の指定)

遺言書に書いた内容を、実際に手続きして実現してくれる人を「遺言執行者」と呼びます。

預金の解約や不動産の名義変更など、遺言書の中で遺言執行者を指名しておくことで手続きをスムーズに進めることができます。


(8)相続人同士の責任を調整する(担保責任の指定)

相続した財産が実は他人の持ち物だったり、後から欠陥が見つかったりした場合、相続人同士で責任を負うことになります(担保責任)。

遺言書では、この責任を誰がどれくらい負担するか、あらかじめルールを決めておくことができます。


【遺言書でも「できないこと・効力がないこと」】

遺言書でも実現できないことがあります。トラブルを防ぐためにも、以下の点には注意が必要です。

(1)遺留分を完全に奪うことはできない

民法では、残されたご家族の生活を保障するため、一定の相続人(配偶者、子ども、親など)に「最低限もらえる財産の権利」を保障しています。これを「遺留分」と言います。

例えば、遺言書に「法定相続人以外の人に全財産を譲る」と書いてあっても、配偶者や子どもは「自分の遺留分を返してほしい」と主張することができます。遺留分を無視した遺言書を作成すると、後々の家族同士の争いの種になってしまうため、十分に配慮しましょう。


(2)認知以外の身分行為(養子縁組など)

先ほど「子どもの認知」はできるとお伝えしましたが、それ以外の身分行為、例えば「誰かと養子縁組をする」「配偶者と離婚する」といった内容を遺言書に書いても、法的な効力は一切持ちません。


(3)付言事項には法的効力がない

遺言書には、財産の分け方などの事務的なことだけでなく、ご自身の感謝の気持ちや、なぜそういう財産の分け方にしたのかという理由を自由に書き添えることができます。

これを「付言事項」と言います。

付言事項の例:

  • 家族への感謝のメッセージ(「幸せな人生でした、ありがとう」など)
  • 財産をその割合で分けた理由
  • お葬式や供養に関する希望

これらには法的な強制力がないので、従わなければならないわけではありません。しかし、遺言に込められた故人の想いなので、不要な争いを防ぐ要素にもなります。


【相続の相談は八王子相続サポートセンターへ】

今回は、遺言書で「できること」と「できないこと」について解説いたしました。

遺言書は、ご自身の想いを形にし、相続の手続きをスムーズにするための強力なツールです。しかし、できること・できないことを正しく把握し、遺留分などに配慮して作成しないと、かえってトラブルを招いてしまうこともあります。

「どうやって書くのがいいのだろう?」「相続税はどうなるのか?」といったお悩みやご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。

60余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。