路線価は今後どうなるのか 相続税評価への影響は

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路線価

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。

毎年7月になると、路線価が更新されます。路線価とは、国税庁が定めた土地の価格であり、相続税評価の軸になるものです。

【路線価とは】

既に述べましたが、路線価とは相続税や贈与税を計算するために、国(国税庁)が決める土地の価格です。毎年1月1日時点の価格が、7月に発表されます。

そもそも、土地には四つの価格があります。複数あるのは、目的に応じて使い分けるためです。

  • 時価(実勢価格): 実際の市場で取引される価格。不動産屋さんのチラシに載っている値段はこれです。需要と供給で決まるので、一番変動が激しい「ナマの価格」です。
  • 公示地価:国土交通省が「この土地の標準的な価格は、これくらいですよ」と発表する「お手本」のような価格です。毎年1月1日時点の価格が、3月に発表されます。
  • 固定資産税評価額: 「固定資産税」を計算するための価格。これは市町村(東京23区は都)が決めています。3年に1回のスパンで価格が見直されます。

【路線価の近年の動き】

今年(2025年)分の路線価では全国平均が前年比で+2.7%前後と、4年連続の上昇となりました。特に都内の上昇は顕著で、東京都全体の平均上昇率は+8.1%であり、全国の約3倍という数値になっています。

上昇の要因は、海外からの観光客の急増、都市部の大規模な再開発の進行、住宅需要の増加、円安を理由にした海外からの投資が挙げられます。

ここ5年(2020年~2025年)で見ても、コロナ禍での一時的な停滞はあったものの、価額は上昇を続けています。この流れはしばらく続くと見込まれます。

【相続税への影響】

こう聞くと、「うちの親が持ってる土地も、値上がりし続けて、相続の時には高額な税金が取られるの?」といったように不安がる方も多いでしょう。

結論から言うと、相続予定の土地は将来的に相続税評価が高くなる可能性があります。実際に売買される価格(時価)が上がれば、国も公示地価を上げます。相続税を計算するための価格(路線価)も、公示地価を追って上がっていく傾向にあります。よって、現状の土地価格の上昇が続けば、路線価も上がっていくでしょう。

しかし、安心してください。土地は相続の際にその評価を安くできる方法がいくつかあります

路線価が上がったとしても、それらの方法を駆使すれば相続税を節税することができます。

【相続税の土地評価の方法】

実際に相続が発生した時、どうやって土地の価値を計算するのか。これには大きく分けて2つの方法があります。

(1)路線価方式(ろせんかほうしき)

主に市街地にある土地の評価方法です。

国税庁のホームページに「路線価図」という地図があり、そこには道路(路線)ごとに「1平方メートルあたり〇〇円」という値段が書いてあります。

参考:国税庁 路線価図・評価倍率表

この路線価に土地面積をかけたものが土地の評価額となります。

「路線価 × 土地の面積 = 土地の評価額」

(2)倍率方式(ばいりつほうしき)

主に郊外や農村部など、「路線価図」が整備されていない地域の土地の評価方法です。こちらの評価倍率も国税庁の公式HPから確認することができます。

固定資産税評価額 × 国が決めた一定の倍率 = 土地の評価額

その土地の「固定資産税評価額」に、地域ごとに決められた「倍率」を掛けて計算します。

【土地の減額要素】

相続における土地評価は一見するととても簡単です。でも土地の価格を決める要素は、この路線価や倍率だけではないんです。

つまり、「土地の形」や、「位置」によっては価格が変わります。もっと言うと、使いにくい土地は評価額を減額できるのです。

「うなぎの寝床」のように、間口が狭くて奥に細長い土地、道路に面していない(旗竿地)、三角形やL字型など、いびつな形(不整形地)、ガタガタの道にしか面していない、土地の中に高低差がある、このような土地は、キレイな正方形の土地に比べて、住宅を建てるにも駐車場にするにしても、不便ですよね。

使いにくい土地は、当然、価値が下がるのです。

そこで、路線価で計算した金額から、「奥行が長すぎるから〇〇%減額」「形が悪いから〇〇%減額」といった専門的な「補正(減額)」を、ルールに則って適用させていきます。

この「補正」を正しく適用できるかどうかで、土地の評価額が数百万、数千万円変わることも珍しくありません。これが、相続税の納税額に直結するのです。

ただし、適用には専門的な知識が必要です。税理士であっても経験が浅ければ評価を間違える可能性があるので、土地評価に実績と経験のある税理士に評価を依頼することをお勧めいたします。

【小規模宅地等の特例を活用すると大幅な評価額減に】

土地の相続税軽減に大きな効果を発揮するのが「小規模宅地等の特例」です。

この特例は、一定の条件を満たさなけれなりませんが、特定の居住用宅地であれば評価額が最大330㎡まで80%減額されます

評価額が下がるということは、支払うべき相続税そのものも大きく減るということになり、節税となります。

【路線価は上昇傾向だが、相続税は節税できる】

現状を見ると、土地の時価は今後も上がり続けます。土地の「時価」が上がると、少し遅れて相続税計算用の「路線価」も上がるので、相続時の土地評価額は今よりも高くなります。

しかしながら、相続税の土地には節税措置がいくつかあります。

「土地の形が悪い」「使いにくい」といった要因で、評価額を下げられる可能性がありますし、小規模宅地等の特例もあります。

少しでも、相続税の節税をしたいのであれば、相続税専門の税理士を頼ってください。

弊所では大切な財産を正しく評価し、払いすぎの税金を防ぐお手伝いをさせていただきます。どうぞお気軽にお声がけください。

【相続についてのご相談は八王子相続サポートセンターまで】

相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。

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