数次相続とは 似ている相続との違いとは 相続税への影響は

相続

 

 

相続手続きをしている最中に、相続関係者が亡くなって、立て続けに相続が起こる可能性もあります。

例えば、父親の相続手続きをしている時に、法定相続人である母親(被相続人にとっての配偶者)が亡くなってしまう場合がそうです。

高齢のご夫婦の場合、相続に相続が重なってしまっても不思議ではありません。老衰でなくとも、事故によって相続の最中に相続人が亡くなることもあります。

このように一つの相続の完了前に、別の相続が重なることを「数次相続」と言います。もし、数次相続が起こると、遺産分割や相続税にどう影響するのか、気になる方も多いでしょう。

本コラムで解説していきますので、是非ご覧になってください。

【数次相続とは】

数次相続とは、相続手続きが終わる前に、法定相続人の1人が亡くなってしまい、次の相続が始まることを意味します。

ご両親の年齢が近い場合、父親の相続手続完了前に、母親が亡くなってしまうケースは珍しくありません。

母親が亡くなれば、保有されていた「父親の財産相続権」は、そのまま母親の相続人である子供に移ります。子供は、父親の相続手続きである遺産分割協議だけでなく、母親の財産の遺産分割協議もすることとなります。

【数次相続が起こりやすい状況】

数次相続が最も起こりやすいのは、両親の年齢が二人とも高齢のケースです。

高齢であれば、病気や怪我による死亡のリスクも高くなるので、相続の中で亡くなる可能性も大いにあります。

特に相続手続きが長引いた場合では、数次相続は起こりやすいと言えます。

相続の期間は、遺産分割協議次第で長期になることもあります。

遺産分割の完了は相続人全員の同意が必要だからです。まとまらない場合は合意が得られるまで議論を重ねなければなりません。

そんな状態が続けば、相続人の一人が病気等で亡くなり、新たな相続が発生する可能性も十分にありえます。

【数次相続がもたらす影響】

ケースによっては、数次相続により相続関係者の数が増えて、権利関係が複雑になる懸念も出てくるでしょう

例としては、母親に父親と認知もしくは養子縁組していない連れ子がいる場合です。

父親が亡くなった一次相続では母親と実子が法定相続人となりますが、母親が亡くなった際には実子に加えて、その連れ子も法律上では法定相続人となります。

そうなれば、相続関係者は増えるので、遺産分割協議が更にまとまりにくくなるという怖れが出てきます。なお、数次相続は法律で制限されていません。理論上は、2次・3次・4次とどんどん続くことになります。

しかし、実際には何度も数次相続が生じることはほとんどありません。関係者が増えすぎて手がつけられないということはあまりないので、その点は安心してください。

【遺産分割協議への影響】

数次相続が発生した場合、最初の1次相続の遺産分割協議に、2次相続の相続人も参加することとなります。

先ほど例で挙げた連れ子の場合など、法定相続人が増える可能性もあります。

遺産分割は、相続人全員で行い、合意を得なければならないので、関係者が増えれば増えるほど協議がまとまらない可能性が高くなります

なお、遺産分割協議書作成の際には、数次相続が発生したこと、誰が誰の相続人として遺産分割協議をしているかを明確に記載してまとめておいた方が良いでしょう。

【相続税への影響】

(1)基礎控除は増えない

相続税における基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」にて計算されます。数式上、法定相続人が増えれば控除額も高くなります。

しかし、数次相続において基礎控除の計算は「被相続人の相続発生時点での法定相続人の数」で算出します。よって、最初の基礎控除額から金額が変わることはありません
数次相続が起こって1次相続の相続人地位を複数人で受け継いだ場合も、法定相続人の数は1回目より増えません。

(2)法定相続分割合も影響なし

数次相続によって、法定相続分も変わりません
2次相続で相続人が複数いた場合も、法定相続分は1人分であり1次で決まっていた法定相続分の割合はそのままになります。

【相次相続との違い】

短い期間内(10年以内)に相続が起きることを「相次相続」と言います。

相次相続は、相次いで相続が発生すると言う意味で数次相続と混同しやすいですが、相次相続の場合は相続が完了し、相続税を納めている状態で次の相続が発生することを指します。

つまり、遺産分割が終わっていない場合には「数次相続」、遺産分割が終わっていて相続税の申告も完了しているなら「相次相続」になります。

【代襲相続との違い】

代襲相続とは、被相続人の死亡前に被相続人の子供など、推定相続人とされる方が相続権を失っていた場合に発生する相続です。

例えば父親が亡くなった時に、その子供が既に死亡していた場合、孫が代襲相続人となります。

代襲相続は相続開始以前に推定相続人が相続権を失っていた場合に生じます。数次相続とは、相続人が亡くなるタイミングが違います。

つまり、代襲相続は「推定相続人→被相続人」の順で亡くなる場合、数次相続だと「被相続人→相続人」の順で亡くなる場合だと覚えましょう。

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投稿者: 古川顕史(公認会計士・税理士)

八王子相続サポートセンター センター長。 公認会計士・税理士。 早稲田大学商学部卒業 あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。 八王子相続サポートセンター所長 相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数。