こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
相続財産には現金や預貯金だけでなく様々なものがあります。土地や建物といった不動産、自動車や骨董品など、これらは定められた方法に従って、相続税評価をしなければなりません。
「株式」の場合も、相続税評価方法は決められています。
株式には取引所で公開取引がなされている「上場株式」と、上場していない「非上場株式」がありますが、それぞれ評価方法が異なります。
目次
【株式の有無の見分け方】
まずは、被相続人が株を持っているかどうかを確認する方法を説明いたします。
上場株式の場合、通常は証券会社に開設された口座で管理されています。証券会社は投資家へ定期的に「取引報告書」を送付しているので、被相続人の自宅に郵便物がないか探しましょう。
また、銀行の通帳の履歴から配当金の入金や証券口座との入出金の記録があれば、株を持っていることになります。
証券口座がある証券会社や支店がわかれば、相続発生日の「取引残高報告書」の発行を請求しましょう。
非上場会社だと、株券や株主の名前と持株数が記載された書類が発行されている場合があります。それらから、株を管理している会社の情報を取得し、問い合わせをしましょう。
【相続財産に株がある場合の手続き】
(1)上場株式の相続手続き
上場株式の場合、相続では証券会社など取引を行っていた会社で名義変更を行います。その際、必要な書類は被相続人の戸籍謄本・住民票の除票や相続人の戸籍謄本・印鑑証明書などです。(遺産分割協議をしていた場合は、遺産分割協議書も必要です。)
各証券会社ごとによって手続き内容は若干違うので、事前に証券会社等に確認をしましょう。
(2)非上場株式の相続手続き
非上場株式の株主の管理者は、株式を発行している会社です。
よって、まずは株式を発行している会社に連絡をしてから、指示に沿って手続きを行ってください。
【上場株式の評価方法】
(1)相続税評価方法
上場株式における相続税評価額は原則として最終価格がベースとなります。これは、該当日の最後の取引でついた株価を指します。
以下の4つの価格のうち、最も低いものが相続税評価額となります。
- ・相続発生日(被相続人の死亡日)の最終価格
- ・相続発生月の最終価格の平均額
- ・相続発生月の前月の最終価格の平均額
- ・相続発生月の前々月の最終価格の平均額
もし、相続の発生した日が土日や祝日の場合、取引所が休みのため最終価格が出ません。その際は「相続発生日に最も近い日」の最終価格を採用します。
例えば、土曜日が相続発生日だとすれば、金曜日の最終価格が採用されます。3連休の中日が相続発生日の場合は、連休前と連休後の各日の最終価格の平均額が採用されます。
(2)最終価格と平均額の調べ方
最終価格を調べるには以下の方法があります。
- ・新聞
- ・インターネット
- ・証券会社に残高証明書を発行してもらう
新聞はアナログ的な手法のため、手間がかかります。最終価格のみ知りたいなら、Yahoo!ファイナンスなどのファイナンスサイトがお勧めです。調べたい銘柄の株価表示をソートした後、該当日の日付を指定すれば、その日の終わり値がわかるので、簡単です。
平均額は、日本証券取引所のページの月間相場表を見れば、金額がわかります。
証券会社に残高証明書を発行してもらう方法は、手数料がかかるものの、間違いのない情報を得ることができるので、こちらでも良いでしょう。
(3)新株割当てや配当支払いがある場合
株式は購入日の3営業日後に受け渡しがあります。よって、新株割当てや配当支払いを受ける権利を得るには基準日の3営業日前に株式を購入する必要があります。
3営業日前の購入でないと、権利確定に間に合わず、配当を受ける権利を有しません。これは「権利落ち」の状態です。
通常、上場株式の新株の割当てがある場合、株式数の増加や配当の支払いが行われることを見込んで、株価は下がります。
相続開始日が権利落ちの日から基準日までの間にある場合、前述の評価方法を行ってしまうと、実質的な株価は権利落ちの前と変わっていないのに、不当に低く評価される怖れがあります。
そのため、相続開始日が権利落ちの日から基準日までの間にある場合は、権利落ちの日の前日以前の終値を採用します。
【非上場株式の評価方法】
非上場株式は公の場で売り買いがされないので、取引価格がありません。よって、株価は管理している会社の財務状況から評価する必要があります。(上場株式と比較しても、評価は難しいと言えます。)
(1)類似業種比準方式
この評価方法は業種が同じか形態の近い上場企業の株価・配当金額・利益・純資産を参考にするやり方です。基準となる数値は国税庁が公表していますので、それを活用します。
評価額は以下の通りに算出します。
比準割合は次の算式で計算します。
比準割合={(評価対象会社の1株当たりの配当金額/類似業種の1株当たりの配当金額)+(評価対象会社の1株当たりの年利益金額/類似業種の1株当たりの年利益金額)+(評価対象会社の1株当たりの純資産価格/類似業種の1株当たりの純資産価格)}/3
調整率は会社規模によって数値が以下のように異なります。
大会社は70%、中会社は60%、小会社は50%
(2)純資産価額方式
相続税の評価額で求めた会社の純資産額から、評価の差額に対する税額を差し引いて評価する方法です。
数式は以下の通りです。
評価差額に対する法人税等相当額 =(相続税評価額による純資産価額-帳簿価額による純資産価額)×37%
(3)配当還元方式
被相続人が少数株主、もしくは会社の経営陣に属する人以外の方を対象とした評価方法です。
この方法は、類似業種比準方式や純資産価額方式よりも株式の評価は低くなります。
【株を相続する際の注意点】
(1)準確定申告を忘れずに
亡くなった方に一定の所得があった場合、亡くなった方に代わって相続人が確定申告を行わなければなりません。これを準確定申告と言います。通常の確定申告とは違い、死亡日から4ヶ月が期限になります。
被相続人が生前に株式の運用を特定口座もしくは一般口座で行っていたなら、所得税の準確定申告が必要です。
相続税申告に気を取られて、こちらの手続きを忘れないようにしましょう。
(2)相続した株式の売却には譲渡所得税がかかる
相続した株式を売却した場合、売却益に税金がかかります。この時の株式譲渡でもたらされた所得は単独で所得額を計算し、一律の税率を乗じて税額を算出します。(分離課税)
納税額は以下の通りです
{売却代金-(取得費+手数料)}×20.315%※
※所得税及び復興特別所得税15.315%+住民税5%
ここの取得費は相続した際の評価額ではなく、被相続人が購入した際の価額になります。価格は取引報告書などで確認できれば良いですが、購入が遥か以前のものであれば価額が分からないでしょう。
その場合、取得費は「売却代金×5%」で計算します。これだと、大半のケースにおいて利益が多額となって、高い税金を支払うことになるので要注意です。
なお、相続税の申告期限より3年以内の売却だった場合、納付した相続税の一部を所得税の計算上でマイナスにすることができます。これは相続税の「取得費加算の特例」といいます。
要するに相続税として支払った税金があるので、その分を考慮できるのです。取得費を上げることができれば、課税金額である譲渡所得を少なくできるので、かかる税金も安くなります。
取得費として加算する額は、以下の通りに算出します。
取得費加算総額=その者の相続税額×譲渡した資産の相続税評価額/その者の相続税の課税価格(債務控除前)
要件を満たさないと適用できませんので注意しましょう。ご自身での申請が難しい場合は、専門家に相談した上で申請を代行してもらった方が確実です。
【株の相続で節税する場合は税理士へ相談を】
ご説明したように、株式は上場株式と非上場株式では算出方法が異なります。非上場株式は算出方法が複雑のため、ご自身での評価が難しい場合は、相続専門の税理士にご相談された方が良いでしょう。
税理士に相談した場合、財産の状況や配当政策などを見直すことで、株の評価額を下げられる可能性もあります。(できる対策は会社ごとに違います。)
また、上場株式の場合でも、相続税を減らすことができます。こちらも状況によって、取れる対策は変わってきますので、できれば相続が発生する前の早い段階から相談することをお勧めいたします。
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