こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
被保険者の死亡によって保険金が支払われる「死亡保険金」は通常相続財産同様に課税対象となりますが、一定の非課税枠が用意されているので、節税対策として利用できます。
前回の記事では、保険金の受取人を誰にするかで、節税効果が変わってくることを説明しました。
非課税金額は一緒ですが、他の制度との兼ね合いで効果に差が出るのです。
では、死亡保険金の受取人を孫に設定した場合はどうでしょう。
孫に資金をある程度渡したいと考える方も多いと思いますが、税額的にどうなのか、メリットはあるのか、この記事で解説していきます。
目次
【受取人が孫だと節税効果はどうなる】
死亡保険金の受取人を孫に設定するのは、相続税対策の観点から言えば得策ではありません。
何故なら、税金が下がるどころか高くなってしまうからです。
【受取人を孫にすることがお勧めできない理由】
では何故、受取人が孫だと相続税が高くなってしまうのか。
理由は三つあります。
(1)非課税枠が使用できない
死亡保険金の非課税枠は、受取人が法定相続人である場合に有効となります。
法定相続人は被相続人の配偶者や子供です。子供がいない場合や相続放棄をした場合は、被相続人の両親、兄弟姉妹の順に権利が移ります。
つまり、孫はこの法定相続人に当たらないので、非課税枠が使えません。
代襲相続や養子縁組をすれば法定相続人になれますが、そうでない場合には、支払われる保険金にそのまま相続税がかかってしまいます。
(2)2割加算の対象になる
相続税の2割加算とは、相続で財産を取得した人が被相続人の配偶者と1親等の血族以外だった場合、相続税額の2割に相当する金額が加算される制度です。
配偶者と1親等の血族以外というのは具体的には被相続人の兄弟姉妹、孫・ひ孫、祖父母、友人等です。つまり孫は対象者なのです。
前述の非課税枠が使えないことに加えて、相続税の1.2倍の金額も支払うことを考えると、税額はかなり高くなってしまいますよね。
(3)生前贈与加算の対象になる
生前贈与加算とは、相続開始3年以内に行われた贈与は相続税の課税対象とするルールです。
簡単に言えば、被相続人が亡くなった日の過去3年間の贈与はなかったものとなる=贈与で得た資金は相続によって得たものとなる制度です。
この制度は受贈者が推定相続人(後の相続で相続人となる予定の人)だった場合に適用されるので、孫が受贈者の場合には本来関係のないものです。
しかし、孫が死亡保険金を受け取ると、遺贈によって財産を取得したことになり、対象者となってしまいます。そうなれば、無税で贈与された財産についても、相続税が課税される可能性が出てきてしまいます。
【孫に死亡保険金を渡したい場合】
孫にある程度資金を渡したいと考える方も当然います。
その場合は、死亡保険金を利用するよりも生前贈与を利用した方が良いかもしれません。
生前贈与なら、年間110万円までの非課税枠が使える上、要件を満たせば高額の非課税枠が活用できる特例もあります。
【相続対策なら専門の税理士に相談を】
死亡保険金は相続税対策の手段として人気です。
ただし、活用方法によって節税効果は大きく変わってきます。やり方を間違えると得をするどころか、逆に損になってしまうこともあります。
確実で最適な節税を行うのであれば、相続専門の税理士に相談するのが一番です。
財産内容や予想される相続の状況から、ベストな対策法を教えてくれるはずです。
【相続税についてのご相談】
「相続税がいくらになるか知りたい」、「相続税を少しでも減らしたい」等のご相談は、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。
70余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。