相続した不動産を売るなら3年以内!【取得費加算の特例】

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。

相続不動産の売却

不動産売却時には諸々の手数料の他に、税金もかかってきます。これは購入金額よりも売った時の金額が高く、仲介料などの諸経費を考慮しても儲けがある場合です。

不動産売却時にかかる税金は「譲渡所得課税」と言われ、売却益=譲渡所得に対して、所得税と住民税がかけられるのです。この譲渡所得課税は、残念ながら相続した不動産についても同様にかかってしまいます。

「せっかく相続税を払ったのに、また税金を払わされるのか!?」とお嘆きの方も多いでしょう。しかし安心してください、相続税をきちんと支払った方に対しては救済措置として税金を控除する特例が用意されています

この特例は「取得費加算の特例」というものです。本記事で詳しく解説いたします。
 

【制度の概要】

取得費加算の特例とは、相続によって取得した土地や建物を一定期間内に譲渡した場合、相続税として支払った金額の一部を譲渡資産取得費に加算できるというものです。

家を売って儲かった利益は譲渡所得と言い、以下の計算式で算出します。

譲渡所得=収入金額-取得費-譲渡費用

 
※収入金額は売却価格、取得費は購入価格や購入にかかった諸経費の合計、譲渡費用は売却にかかった諸経費

つまり、取得費加算の特例とは簡単に言えば、取得費を上げることで課税金額である譲渡所得を少なくする制度なのです。支払った相続税が高ければ、その分譲渡所得税を抑えることができるというわけです。
 

【適用要件】

  • ・適用者は相続もしくは遺贈で財産を取得した者である
  • ・財産を取得した際に相続税が課税されている
  • ・該当の財産について、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡されている

特例の適用には上記三つ全てを満たします。法定相続人でなくても、遺贈として不動産をもらい受ければ対象となります。

相続税の申告期限は、被相続人の死亡=相続開始があったことを知った日の翌日から10か月です。通常は、被相続人の死亡と同時に相続開始を知るので、不動産の売却期限は「相続開始から3年10か月以内」と考えれば良いです。
 

【手続き】

特例適用には確定申告を行う必要があります。

  • ・相続税の申告書の写し
  • ・相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
・譲渡所得の内訳書

必要書類は上記の通りで、国税庁のホームページや税務署で取得可能です。
 

【取得費に加算される金額の算出方法】

取得費として加算される額は、以下の計算式で算出します(加算額が譲渡益額を超える場合は、その譲渡益相当額となります)。

取得費加算総額=その者の相続税額×譲渡した資産の相続税評価額/その者の相続税の課税価格(債務控除前)

 
支払った相続税が高いこと、取得財産における不動産の割合が大きければ、取得費加算総額は増えることになります。
 

【注意点】

取得費加算の計算式にある通り、分母で使う課税財産の額は、債務控除前のものです。

相続税の計算上、債務を負担すると課税金額から差し引かれるので、相続税は減りますが、取得費の加算額の計算上では債務控除前の財産額を使うので、債務を負担すればするほど取得費の加算額が減ることになります。

よって、取得費の加算の特例を利用する場合は、できるだけ債務を負担しない方が良いと言えます。ただし、状況によっては対応が複雑になるケースもあるので、確実な節税を実施するのであれば専門の税理士を頼る方がベストです。
 

【不動産相続など相続手続きのお悩み】

不動産の相続など相続手続きに関するお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。

70余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。

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投稿者: 古川顕史(公認会計士・税理士)

八王子相続サポートセンター センター長。 公認会計士・税理士。 早稲田大学商学部卒業 あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。 八王子相続サポートセンター所長 相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数。