こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
相続が開始されると、故人の預金口座が凍結されてしまいます。
凍結されれば、お金の引き出しも預け入れも不可となり、電話代や光熱費、クレジットカードの口座引き落としによる支払いもできなくなります。
また、家族の預金をすべて故人の口座にまとめていた場合には、生活費が支払えなくなり、非常に困ったことになってしまいます。
目次
【どうして凍結されるのか】
故人の預金は相続財産となり、相続人の共同の所有物となります。そのため、遺族が自由に引き下ろせる状態にあるとトラブルにつながってしまいます。
また、故人に借入がある場合は貸し倒れを防ぐ目的もあります。
凍結解除の手続きが複雑な理由は、そのためです。
【凍結のタイミング】
口座が凍結されるのは、金融機関が名義人の死亡を確認してからです。
金融機関は以下のようなきっかけから死亡の確認を行います。
- ・相続人等からの連絡があった場合
- ・残高証明書の取得申請があった時
- ・新聞等のお悔やみ欄
- ・葬儀の看板
市町村役場に死亡届を提出すれば口座が凍結されると誤解されている方もいますが、役場が金融機関に直接連絡をすることはありません。
なお、金融機関も全ての死亡事実を把握できるわけではありません。そのため、中には口座が凍結されないままになっていることもあります。
【凍結後の手続き】
凍結された後に口座を使うには口座の名義変更(相続)をするしかありません。金融機関によって必要書類や手続き内容は異なるので、事前確認が必須となります。
(1)遺言書があるケース
遺言書があり、預金の受取人と遺言執行者が指定されている場合は、遺産分割協議をする必要がないので、比較的簡単に凍結解除を行えます。
手続きに必要なものは以下の通りです。
- ・遺言書(検認済証明書も含む)
- ・遺言者の戸籍謄本
- ・遺言執行者の印鑑証明書
- ・遺言執行者の実印を押印した払戻依頼書
- ・通帳及びキャッシュカード
(2)遺言書がないケース
遺言書がない場合は、遺産分割協議を行って相続人全員が財産分割に同意する必要があります。同意を得られない場合は、解決するまで口座の凍結解除ができません。
手続きに必要なものは以下の通りです。
- ・被相続人の、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
- ・相続人全員の戸籍謄本
- ・相続人全員の印鑑証明書
- ・相続人全員の実印が押印された銀行所定の用紙(相続届)
- ・通帳及びキャッシュカード
【生前の対策】
口座の凍結解除や、凍結した口座からの引き出しには手間がかかります。そのため、生前のうちからある程度の対策をしておく方が良いでしょう。
(1)口座からお金を引き出しておく
葬儀費用や生活のための資金は、相続発生前にある程度引き出しておく方が良いでしょう。ただし、トラブル防止のために相続人となる予定の方全員の同意を得ておきます。
被相続人自身が生前のうちに預貯金を引き出し、特定の親族に託しておく方法でも構いません。
(2)死亡保険金等に加入する
死亡保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象です。ただし、受取人が手続きを行うだけですぐに保険金を受け取ることができるので、通常の相続財産の取得よりも手間がかかりません。
なお、死亡保険金には『法定相続人の数×500万円』の非課税枠もあるので、枠内であれば相続税はかかりません。
(3)遺言書を作成する
遺言書がない場合は、遺産分割協議で相続人全員が財産分割に同意しない限り、口座の凍結解除ができません。揉めてしまって、協議が一年以上かかることもあります。
そのため、遺言書を残しておくと口座凍結解除がスムーズに進むことになります。
(4)口座を整理しておく
口座が何本もあっては、管理や手続きの煩雑さも増してしまいます。よって、不要な口座は生前に解約して、口座数を少なくしておきましょう。
特に外国の金融口座を持っている場合は、言語の問題もあり手続きが複雑になってしまうので解約の手続きを進めておいた方が良いでしょう。
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