こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
相続関係の記事を読んでいるとよく出てくる「遺贈」という言葉。言葉自体や大まかな意味は知っていても、本来の意味や「相続」との違いについてはご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、遺贈について細かく解説いたします。是非、参考にしてください。
目次
【遺贈とは】
遺贈とは、遺言等によって財産の全部か一部を、自身の死後に受遺者へ無償で譲渡することです。受遺者は遺贈する側が自由に選択できるので、法定相続人以外でも構いせん。
対して、相続は被相続人と法定相続人の間で自動的に生じるものです。亡くなった方の配偶者や子供、父母や兄弟姉妹など、一定の関係にある中で近い順位の人が法定相続人となり、財産を引継ぎます。
つまり、相続は被相続人の財産を法定相続人のみに取得させることに対し、遺贈は遺言によって財産を法定相続人以外にも取得させることが可能なのです。
そのため、対象によっては手続きにも違いが生まれます。
【遺贈の種類】
(1)包括遺贈
包括遺贈とは相続財産の全部あるいは一定の割合を指定して譲渡する方法です。例えば、「相続財産の1/8を知人のAさんに遺贈する」と遺言書に書いておけば、包括遺贈となります。
包括遺贈で財産を受け取る場合、受遺者は実質的に相続人と同じ権利義務を持つので、債務などのマイナスの財産があっても、指定された割合分だけ引き継がなければなりません。要するに、プラスの財産だけ受け取ることはできないのです。
(2)特定遺贈
特定遺贈とは特定の財産を指定して譲渡する方法です。
例えば、「〇〇市の不動産をAさんに遺贈する」「〇〇社の株式をBさんに譲る」といった内容の遺言書を作成すれば、成立します。
特定遺贈は包括遺贈とは違って、特定の財産だけを取得します。そのため、マイナスの財産まで取得する必要はありません。(ただし、遺言書に指定がある場合は負担しなければなりません。)
【遺贈における注意点】
遺贈では対象が法定相続人以外の場合、相続税の金額が変わってきます。
(1)基礎控除の金額が変わらない
相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除枠があります。計算式からわかる通り、法定相続人の数によって控除額は増えるので、法定相続人以外が財産を取得してもお得にはなりません。
(2)死亡保険金の非課税枠が適用不可
死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税が課税されますが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を適用できます。
ただし、法定相続人以外が保険金を取得した場合は非課税枠が適用できません。
(3)相続税2割加算の対象になる
配偶者や一親等の血族、代襲相続人以外の方が相続財産を得た場合、相続税が2割増となる取り決めがあります。
従って、ケースによっては受遺者が高額の相続税を負う可能性もあります。
(4)トラブルになりやすい
遺贈は法定相続人からすれば、自身の取得財産が減るものです。また、受遺者が全く知らない人間の場合、心情的にも良い状況とはなりません。
また、特定順位の法定相続人は、最低限の遺産をもらう「遺留分」という権利があります。その遺留分が遺贈によって侵害されることもあります。遺留分が侵害された場合、遺留分侵害額請求をして財産を取り戻す必要があるので、相続での手間が増えてしまいます。
遺贈を行う場合は、前もって家族に話しておくなど、十分な配慮を要します。
【相続についてのお悩み】
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