こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
年も近く老齢のご夫婦の場合、どちらが先に亡くなって相続人になるかわかりません。そのため、「同じ内容で共同の遺言書を作成すれば良いのでは?」と考える方々がいます。
しかし、夫婦二人で同一の遺言書を作成した場合、その遺言書の多くが無効になってしまう可能性があります。本記事では、何故同一の遺言書が無効になってしまうのかということや、有効な対策についてもご紹介いたします。
【共同の遺言書は無効になる】
民法では「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない」と決められています。つまり、夫婦共同で同じ書面で遺言書を作成した場合は、その遺言書は無効になるということです。これを「共同遺言の禁止」と言います。
遺言書が夫の部分と妻の部分とで簡単に切り離されるもので、文章が別々に記載されている場合には有効であると過去の裁判で判断された例外もありますが、裁判で有効か無効かを争うのは大きな負担が生じてしまいます。
遺言書は明らかに有効なものを作ることが大切です。そのため、夫婦共同で同一の遺言書を作成することは避けるべきでしょう。
【共同遺言は何故ダメなのか】
共同遺言が禁止されるのは、遺言の撤回が自由にできなくなるからです。そもそも遺言書は作成者の意思で撤回することが可能ですが、これは遺言制度が「遺言者の最終意思の確保」を重視しており、遺言作成者に撤回の自由を認めているからです。
しかし、2人以上で同一の証書の遺言書を作成できるとしてしまった場合、撤回も共同で行わなければなりません。そうでなれば、撤回の自由は確保できなくなります。
このため民法は共同遺言を禁止し、もし共同遺言が作成された場合は無効になるという扱いにしているのです。
【配偶者に財産を確実に渡すなら夫婦相互遺言を活用】
ある夫婦が財産をどちらが亡くなってもお互いに相続させたいと考えた場合、どのような遺言書を作成すればよいのでしょうか。
この場合では、夫婦相互遺言の作成が最も効果的な手段です。具体的には夫婦で別々の用紙に「自身が死亡した場合、財産は配偶者に相続させる」という趣旨の遺言書を作成します。そのような遺言書があれば、残された配偶者はスムーズに財産を受け取ることができます。(他に法定相続人がいる場合は遺留分を侵害しないように注意しましょう。)
【遺言書を残すことはとても大切】
配偶者しか相続人がいないのであれば、わざわざ遺言書を作成しなくても良いのでは?と考えるかも知れませんが、相続では予期せぬ相続人が登場する可能性もあります。
「亡くなった夫に実は兄弟がいた」など、会ったこともない法定相続人が相続が開始されてから現れることもあるのです。そうなれば遺産分割協議を開いて取得分を話し合わなければなりません。
遺言書があれば、遺産分割協議を開くことなくスムーズに財産取得ができます。法定相続人の遺留分さえ気をつければ良いのです。前述の例では、被相続人の兄弟姉妹に遺留分は認められないので、遺言書を残しておけば、大事な財産を取られることはありません。
【遺言書作成のご相談】
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