こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている 税理士 の古川顕史です。
相続で財産を取得した場合、遺産総額によっては相続税を支払わなければならない場合があります。税額計算をした上で、相続税が生じることがわかったら、期限内に申告と納付をします。
もし、期限を破ってしまった場合や、本来よりも低い税額で間違えて申告してしまった場合、罰として追加の税金が徴収されてしまいます。申告の不備を理由として徴収される税金は加算税と言います。
加算税には種類がありますが、最も重いものは重加算税です。
重加算税は、悪質なケースについて課されます。過去を振り返れば、とあるお笑い芸人さんが2000万円程の所得隠しを指摘され、重加算税を課せられていました。
重加算税は本来納めるはずだった税額から当初申告した税額を差し引いた金額に35%もしくは40%の税率が上乗せされます。
このようにペナルティとしてはかなり重い重加算税ですが、相続においても適用されるケースはあります。では、どのような場合に課されるのか。本記事で解説いたします。
【加算税とは】
まず、重加算税の大元である、加算税の解説をします。
加算税とは申告の内容に不備がある、期限内に申告をしなかった場合に課される附帯税です。
ここで言う「不備がある」とは大まかにいえば、申告額が本来よりも少ないことです。申告額が少なくなるのは、財産の計上漏れ、評価方法の間違い、単純な計算ミス等色々な要因があります。
なお、申告が本来よりも多くなることは問題ありません。税務署としても、多めに納税してくれたことについては文句を言う必要もないからです。(払いすぎた税金は還付手続きをすれば返ってきます。)
加算税には以下の4つの種類があります。
- ・無申告加算税…申告期限までに申告書を提出しなかったときに課せられます。相続税の申告期限は被相続人が死亡したことを知った翌日から10ヵ月以内です。(厳密には被相続人が死亡したことを知った日=相続開始日ではありません。)
- ・過少申告加算税…申告内容が本来の税額よりも低い等の問題がある場合に課されます。
- ・不納付加算税…給与などの源泉徴収税額を納期限までに納付しなかったときに課せられる税金。相続税の申告では課せられません。
- ・重加算税…事実の仮装や隠蔽等、悪質なケースに課されます。
【重加算税が課されるケースとは】
既に述べましたが重加算税は事実を仮装・隠蔽して申告をした場合などに課せられる税金です。
相続でよくあるのは、財産の一部を隠すことです。
例えば、被相続人の生前に多額の預金を引き下ろし、タンス預金として自宅に隠しておくケースです。タンス預金はバレないだろうと思いがちですが、税務署も過去から現在までの被相続人・相続人の口座記録を調べますし、実地調査等々を駆使して、怪しいお金の流れを突き止めます。
結果的に財産を故意に隠したことがばれてしまうと、ペナルティとして重加算税がかかります。
重加算税の税率は相続税の申告書提出の有無で異なります。
相続税の申告書提出した場合、過少申告となるわけですが、その場合は「重加算税(過少申告)」として原則35%の税率がかかります。
一方、申告書の提出がない無申告であると「重加算税(無申告)」として40%が徴収されます。
【意外に多い重加算税の件数】
国税庁が発表したデータによると、令和4年度の相続税の税務調査の数は8,196件ですが、そのうち申告漏れは7,036件、重加算税の対象となった件数は1,043件となっています。つまり、重加算税が課された割合はおよそ15%になります。
なお、1件当たりの追徴税額は 816万円にもなり、その前の年度よりも追徴税額は増えています。
数字からも所得隠し等、相続税の支払いを減らそうとする方は一定数いるようです。しかしながら、相続税から故意に逃れようとすると、税務署から指摘をうけて高額なペナルティを支払うことになります。
【刑事罰になる可能性も】
相続では相続税を適切に申告しなかった場合、懲役を科せられる場合もあります。
実際、相続人が、相続財産から現金、預貯金等の一部を除外するなどして内容虚偽の相続税申告書を提出したことで、懲役刑が科されたケースはあります。
【申告は正しく行うこと】
重加算税は相続税を意図的に少なくする、無申告とした場合に課せられる税金です。
重加算税の対象となってしまうと、本来支払うべき正しい金額の相続税と重加算税の両方を支払わなくてはなりません。また正しい納税がされなかったので、日数分に延滞税もかかります。
税務調査によって、不正は必ず暴かれるので、故意に財産を隠す、評価方法を誤魔化す等の行為はやめましょう。
もし、現時点で心当たりがある場合は早急に修正申告をおこない、追加で納税しましょう。傷は浅いうちにふさいだ方が良いからです。
【相続税の相談は専門の税理士へ】
相続税申告は複雑な部分もありますから、不安な方は無理をせず、専門の税理士に相談してください。正しい申告と納付をして、税務調査を受けないようにしましょう。
相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。
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