こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
相続が発生した際にしなければならないことの一つとして、財産調査があります。調査した上で、故人にいくらの財産があるのかを正確に把握しておく必要があります。
この作業は相続税申告のためです。遺産総額を押さえていないと相続税が生じるかもわかりません。また、財産の正確な把握は、遺産を相続するか相続放棄を選択するかを決定するための指標にもなります。このような点からも、財産調査は非常に大切な作業かお分かり頂けるかと思います。
なお、財産調査後には、ご自身で財産目録を作成することをおすすめします。
ケースによっては目録の作成が必須の場合もあります。必須でなくとも、財産目録の作成には多くのメリットがあるため、やっておいた方が良いでしょう。
目次
【財産目録に記載する項目】
財産目録にはどのような内容を記載するべきでしょうか。
(1)プラスの財産
- ・預貯金、現金
- ・不動産
- ・自動車や骨董品等の動産
- ・有価証券
- ・ゴルフ会員権等
上記はほんの一例です。プラスの財産が金銭だけなら良いですが、不動産や株式、美術品など種類が多くある場合、記載漏れが出ないようにしておきましょう。漏れが出てしまうと、申告漏れに繋がり、追徴課税となる怖れがあります。
(2)マイナスの財産
- ・借金やローンなどの債務
- ・家賃や水道光熱費の滞納費
- ・葬式費用
マイナス財産の大きさは、相続放棄や限定承認を判断する指標になるため、目録に記載しておく必要があります。
【財産目録を作成することで得られるメリットとは】
(1)財産の全容を明らかにできる
相続では遺産の全容を把握することが重要です。
総財産が全て明らかになっていないと、相続人同士であっても「隠し財産があるのでは?」といった疑念が生まれ、トラブルの原因になってしまいます。そうなれば、円滑な相続ができなくなってしまいます。
全ての財産を明らかにするツールとして便利なのが財産目録というわけです。法定相続人全員が目録で財産を確認できれば、具体的な分割協議ができるでしょう。
また、目録があれば、相続放棄を選択するかどうかの判断材料にもなります。
(2)相続手続きが円滑になる
あらかじめ財産目録があれば、遺産分割協議をスムーズに行うことができます。
財産目録を作成せずに一部の相続人しか財産の全容を知らない状況で話し合うと、分配内容は不公平なものになる可能性が出てしまいます。
遺産全容を相続人全員が把握した上で、円滑に公平性を持って話し合うためにも、やはり財産目録は作成しておくべきです。
(3)遺言書の作成にも便利
遺言書を作成する際にも、財産目録を作成しておくメリットがあります。
遺言書には財産の分配方法や内容について書きますが、遺言者・受遺者共に財産を把握できる財産目録があればスムーズに記載することが可能となります。
特に、不動産を多く所有していたり、多くの銀行との取引がある場合には、相続での手続きも円滑に進めることができるため、財産目録を作成しておくべきです。
【目録作成が必須となるケースについて】
冒頭でもお伝えした通り、財産目録を必ず作成しておかなければならない場合もあります。
(1)遺産分割の調停
この場合、家庭裁判所に財産目録を提出しなければならないため、必須となります。
(2)遺言書で指定された遺言執行者がいる場合
遺言執行者は相続人に交付するため、財産目録の作成が必須となります。
【財産目録作成にあたっての注意点】
財産目録には特に決まった形式は無いですが、作成にあたっての注意点がいくつかあります。
(1)財産内容に漏れがないようにする
財産の記載漏れがあると、後々になってかなりの手間がかかってしまいます。記載漏れの財産については遺産分割協議により再び分割内容を決めるからです。
協議を何回もしなくて良いように、財産目録の作成の際は財産の全容をしっかり把握した上で、漏れのないようにしましょう。
(2)財産が特定できるようにする
例えば、預貯金であれば、故人の口座の金融機関の名前だけでなく、支店名、口座種別、口座番号、口座名義も明記しておくことで簡単に特定することができます。
不動産であれば、地番・地目・持分・面積などを詳細に記載しましょう。
負債については、その種類や借入総額、債務残高、借入先の名前を書きます。また毎月の返済額や完済予定日も記載しておくと、より一層良いでしょう。
財産目録は義務ではないため作成しなくても問題はありませんが、作成しておいた方が相続手続きが円滑に進む他、相続人同士のトラブルもなくせるので、作成しておくメリットは十分にあります。
なお、自身での作成が難しい場合には、財産目録の作成を代行することも可能です。
その際は財産調査と合わせて依頼しましょう。
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