音信不通の相続人がいる場合の相続手続き 遺産分割等をどう進めるか

こんにちは、八王子・多摩で会計事務所をやっている税理士の古川顕史です。
相続が発生すると、法定相続人である親族が集まって遺産の分け方について話し合い(遺産分割協議)をします。しかし、関係が希薄で長年連絡を取っていない、あるいは居場所すら分からないというケースもあるでしょう。
「連絡が取れないなら、その人抜きで話し合いを進めてしまおう」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、法律上、それは認められません。
今回は、連絡の取れない「音信不通の相続人」がいる場合の対処法について解説いたします。
【遺産分割協議は「全員」の合意が必要】
遺産分割協議は相続人「全員」の合意が必要です。たとえ何十年も会っていなくても、絶縁状態であっても、その人が戸籍上の相続人である限り、協議に参加する権利があるからです。
一部の相続人を除外して作成した遺産分割協議書は、法的に「無効」です。無効な協議書では、不動産の相続登記もできませんし、銀行預金の解約も断られます。
このように、たった一人でも連絡がつかない人がいると、相続手続きは進まないのです。
【対処法1:まずは居場所を徹底的に調査する】
音信不通の相続人への対策として、最初のステップは「捜索」です。
(1)戸籍の附票を取得する
相続手続きのために戸籍謄本を集める際、一緒に「戸籍の附票」という書類を取得します。ここには、その人のこれまでの住所の移り変わりと、現在住民登録をしている住所が記載されています。本籍地さえ分かれば、役所で取得することが可能です(相続人であれば正当な請求権限があります)。
(2)手紙を送る・現地を訪問する
戸籍の附票で現在の住所が判明したら、まずは手紙を送ってみましょう。これまでの経緯や、相続が発生した旨を丁寧に伝え、連絡をくれるよう依頼します。できれば、内容証明郵便などの確実な方法を取りましょう。
それでも返信がない場合は、実際にその住所へ行ってみることも有効です。表札があるか、電気メーターが動いているかなどを確認し、近隣の方に聞き込みを行うことで、本人の所在がつかめることもあります。
【対処法2:不在者財産管理人の選任】
調査の結果、住民票上の住所に本人が住んでおらず、居場所が分からない場合、「不在者財産管理人」を選任する方法があります。
不在者財産管理人とは家庭裁判所に申し立てを行い、行方不明者(不在者)の代わりに財産を管理する人を選んでもらう制度です。通常は、利害関係のない士業の専門家が選任されます。
選任された管理人は、家庭裁判所の許可を得た上で、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することができます。これにより、全員の合意という要件を満たし、手続きを進めることが可能になります。
この制度を利用するには費用がかかります。裁判所への申立手数料に加え、管理人の報酬を賄うための「予納金」として、数十万円から100万円程度を納める必要がある場合があります(遺産額や事案によります)。
また、管理人の役割はあくまで「本人の財産を守ること」ですので、遺産分割において行方不明者の取り分をゼロにするような極端な内容は、原則として認められません。
【対処法3:失踪宣告】
「失踪宣告」とは、法律上その人を「死亡したもの」とみなす強力な制度です。
- 普通失踪…生死不明の状態が「7年間」継続している場合に申し立てることができます。
- 危難失踪(特別失踪)…震災や海難事故など、死亡の可能性が高い危難に遭遇し、危難が去ってから「1年間」生死不明の場合に利用できます。
失踪宣告が認められると、その人は法律上死亡したと扱われます。これによってその行方不明者自身の相続が開始します。例えば、父の相続において兄が行方不明で失踪宣告を受けた場合、兄は死んだものとみなされ、もし兄に子供(代襲相続人)がいればその子供と、子供がいなければ他の相続人と協議を行うことになります。
不在者財産管理人とは異なり、死亡扱いとなるため、遺産分割協議だけでなく、行方不明者自身の財産整理や戸籍の処理も同時に確定することになります。
【相続税の申告期限にも注意】
手続きを進める中で、忘れてはならないのが「相続税」。相続税の申告・納税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。
不在者財産管理人の選任や失踪宣告の手続きには長い時間がかかります。遺産分割が間に合わないからといって申告を放置すると、無申告加算税などのペナルティを受けることになります。
遺産分割が未完了でも、一旦「未分割」として法定相続分で仮の申告を行い、後日、行方不明者への対応が完了して遺産分割が確定した段階で、申告をやり直します。
【相続についての相談は八王子相続サポートセンターへ】
連絡の取れない相続人がいる場合、感情的に「関わりたくない」と思っても、放置すればするほど問題は複雑化し、相続手続きが進みません。
まずは戸籍の附票などで現住所を徹底的に探す。見つからない場合は、状況に応じて「不在者財産管理人の選定」か「失踪宣告」を検討します。
これらの手続きには時間がかかるため、相続税の申告期限を意識して早めに動きましょう。
相続についてのお悩み・ご相談がありましたら、八王子・多摩の古川会計事務所・八王子相続サポートセンターへお気軽にお問い合わせください。
60余年の豊富な実績を持つ税理士が親切・丁寧に対応いたします。

八王子相続サポートセンター所長。早稲田大学商学部卒業。あずさ監査法人退社後、古川会計事務所入所。
相続税対策(納税予測、資産組替シミュレーション等)立案多数
「法律顧問」も加えて「相続問題」をワンストップで解消するべく、「八王子相続サポートセンター」を開設いたしました。
八王子・多摩地域における長年の実績をふまえ変化する税制をフォローし、事前・事後の対策如何にかかわらず
「円満な相続」「否認されない相続税申告」を目指し、邁進してまいります。